楽器音の収録と周波数分析

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目的

楽器音を簡易無響箱の中で収録し、その音をコンピュータ上で分析することにより、以下の事柄について理解を深める。


実験方法

楽器音の収録

自然楽器と、それを演奏する人を用意する。無響箱内で、マイクロホン(B&K4190)をプリアンプ(B&K2669)に接続し、プリアンプ出力をマイクロホン電源(B&K5953)の入力に接続する。マイクロホン電源の出力は、DAT(TASCAM DA-P1)のLine In(L, R どちらでもよい)端子に接続する。マイクロホンをスタンドに固定し、演奏者がもつ楽器から約50cmほど離れた位置におく。このとき、楽器、演奏者、マイクロホンの3者の位置と向き(角度)、距離の関係を見取り図として記録しておき、その図をレポートに書くこと。また、以下に説明する録音機器の接続の見取図(何という機器のどの端子になにを接続したかが分かる図)もレポートに書くこと。

プリアンプ(B&K2669)の使用方法

DATとマイクロホン電源との接続 収録の全景

DATのサンプリング周波数は 44.1KHz にセットすること。正式な録音を開始する前には、DATを録音待機状態にして、ヘッドホン(HDA-200)を用いてDATに入力される音を確認しながら、演奏される音の録音レベルを調節する(オーバーレベルの表示が点燈しないようにすること)。準備ができたら、ポーズボタンを押して、録音を開始する。

録音すべき音は以下の5つである。各音の録音時間は、1〜2秒程度とする。

  1. その楽器が演奏できる音域の中ほどにあるAの高さの音を、通常の強さ(mf)で演奏した音
  2. 上記Aの音を、もっとも強く(ff)演奏した音(強奏音)
  3. 上記Aの音を、もっとも弱く(pp)演奏した音(弱奏音)
  4. その楽器が演奏できる音域で最も低い音を、通常の強さ(mf)で演奏した音
  5. その楽器が演奏できる音域で最も高い音を、通常の強さ(mf)で演奏した音

各条件における録音の直前には、どのような音がこれから録音されるかを話した声を録音しておくこと。

全ての録音が終った時点で必ず、テープをまき戻して再生し、ヘッドホンを用いて、録音された音に異常(ノイズ、歪みなど)がないかを確認すること。

DATからコンピュータに音データをデジタル転送

DATのデジタル出力を、D/A変換器(AD216)のデジタル入力端子に接続する。AD216制御用のソフトウェアを起動し、録音の条件を(Digital入力)にセットする。DATにおいて各条件で録音された音の頭出しを行なった後、AD-216の録音時間を10秒とし、録音を開始する。AD216の録音時間内にDATから再生された1つの音がはいりきらなかった場合は、やりなおす。うまく録音された場合は、波形の表示窓に、楽器音の波形が表示されるので、Uドライブ(各自のデータドライブ)にファイル名をつけて保存する。これを録音した5つの音すべてについて行う。DATの一時停止後に再生される音にはノイズが混ざる恐れがあるので、DATを再生させながら、タイミングを見計らい、AD216の録音を行うと良い。

音ファイルの整形

5条件で録音された音ファイルは無音部分を多く含んでいるはずなので、 それぞれCoolEdit96 に読み込み、波形を見て音があるチャンネルを選択した後、音がある部分だけを選択し、その選択された部分のみを、再びファイルとして名前をつ けて保存する。ここで保存した音ファイルは、次の実験でも使用するので、新 しいディレクトリを作成して、その中に保存しておくのが望ましい。


分析と考察

各条件で録音された音それぞれについて CoolEdit96上で分析し、その音に 対して各自が感じる聴こえをと、分析結果とを対応付けて、各条件での音を比 較する。

周波数分析については、周期的な波形が長く続くような楽器音(持続 音)の場合は、FFTのサイズを 大きく(16384程度)して分析する。

時々刻々波形が変化していく楽器音(過渡音)の場合は、音の始まり部分と周 期的な波形が現れる部分を波形を拡大して調 べ、その周期的な波形の部分についてFFTを実行する。その周期的な波形の部 分が、音の始まり部分から数えて、何msec過ぎた部分であったかを調べておき、 各条件での分析開始時間を、各音の始まり時間から数えて、その時間で揃える こと。この場合、FFTのサイズを小さく(2048)すること。

  1. 波形を画像データとして記録し(この時、後で行う周波数分析に使用した波形の時間の中央にマウスポインタを置いた状態で記録すること)、その図をレポートに掲載する。これらの図より、各条件間での波形の時間エンベロープの形状の違いについて比較する。
  2. 波形を拡大して、周期的な波形が続いているような部分について周波数分析し、そのスペクトル図を画像データとして記録し、その図をレポートに掲載する。これらの図より、各条件間でのスペクトルエンベロープの形状の違いについて比較する。
  3. 上記で行なった周波数分析の窓を拡大して、マウスポインタを基本周波数のスペクトルに合わせることにより、おおよその基本周波数を調べる。また、その基本周波数が、音名では何に相当するか、を調べる。
  4. 周波数分析結果より、もっとも大きいパワーを持つ倍音は第何倍音かを調べ、比較する
  5. 自分が録音し分析した楽器が、どのような種別の楽器であるかを、「楽器 の音響学」より調べ、同様な発音機構をもつ楽器のスペクトルや波形エンベ ロープと、自分が分析したデータを比較して、どのような点で共通点が見られ るか、あるいは異なるか、を考察せよ。

周波数分析に必要な事柄


参考文献

  1. TASCAM DA-P1 取り扱い説明書
  2. 日東紡音響エンジニアリング AD216 取り扱い説明書
  3. 楽器の音響学、安藤由典、音楽之友社


akira@rsch.tuis.ac.jp