AVコンテンツの画質・音質が視聴時に与える印象とその関係性 [東京情報大学] [西村ゼミ卒業論文概要集] [年度ごとの一覧]
2024年度西村ゼミ卒業論文
AVコンテンツの画質・音質が視聴時に与える印象とその関係性

この研究は、AVコンテンツの映像と音楽の品質と、視聴時の印象の関連性について明らかにすることを目的とする。異なるAV素材3作品を用意し、各自素材内で映像と音楽に劣化処理を施したものを組み合わせ、単独提示(映像のみ、音楽のみを再生する)、両方提示(映像と音楽を同時に再生する)の両条件で再生、印象を分析することによって、どの要因が印象に最も影響を及ぼすのか、考察することが可能になると考えた。

実験では、SD法を用いた評定実験によって、AV素材の再生品質の違いが、視聴時の印象に与える影響を調べた。実験で提示する素材には、内容がアニメ、ライブ、吹奏楽の3作品を用意し、各作品中の1分弱〜2分ほどのまとまりの良い部分を用いた。これらの3素材に対し、キャプチャ品質から、画質・音質それぞれ劣化させる編集を施したものを含む4パターン(画良音良、画劣音良、画良音劣、画劣音劣)を素材毎に作成した。そして、キャプチャ品質と加工した各AV素材の映像及び音楽を、単独提示、両方提示の両条件で再生し、評定尺度法を用いて被験者に映像と音楽再生音の印象を評定させた。この際のアンプのボリュームは、全ての呈示で同じとした。そして、得られた値を各条件の印象評定項目ごとに平均値化した後、その値を変量として主因子法による因子分析を行ない、便宜上評価因子、ユニーク因子、硬さ因子と呼称する3因子を抽出し、各条件のこれらの因子得点を比較した。

分析結果から、評価因子得点は混合提示において、ライブ、吹奏楽は条件によって印象は大きく変わらず、横並びの傾向が見られた。また、映像のみの単独提示の場合、画質の良し悪しに関わらず、評価の著しい低下が見られ、音楽のみの単独提示の場合、混合提示と比較し評価は変わらなかったことから、これら2素材は映像よりも音楽の内容を重視するコンテンツである可能性を考えた。一方アニメは、使用した素材が元々持っている品質の「粗さ」が良い影響を与えたか、画劣音劣が画良音良に次いで良いと評価された。また、画良音劣が最も悪いとされ、これはHDリマスターの影響で映像だけ高品質で、音楽のみ劣化させたことによる映像と音楽の不一致さが際立ったことによるものと考える。以上の結果と考察から、評価因子はコンテンツへの依存度は少ないが、アニメについては、例外的に依存する可能性があるため、他のアニメ素材を用いた印象評定実験を行い、影響を検討する必要があると考える。

ユニーク因子、硬さ因子は、評価因子と比べ、映像の画質と音楽の音質を変更しても、同様に印象評価される傾向が見られた。このことからこれら2因子は、AV素材の内容に基づいて印象が異なるという、コンテンツ依存である可能性が高い結果となった。