ギター弦の劣化に伴う音の変化 [東京情報大学] [西村ゼミ卒業論文概要集] [年度ごとの一覧]
2024年度西村ゼミ卒業論文
ギター弦の劣化に伴う音の変化

ギターなどの弦楽器には、時間経過によって弦が劣化すると音色が変化することが共通認識として存在する。先行研究では弦の剛性変化が音色変化の要因の一つとなっていることが明らかになった。この研究では、LEDとPDアレイからなる光プローブを用いて弦の2次元振動を計測し、劣化による減衰特性や周波数特性の違いも確認することができた。

しかし、劣化によって変化した物理特性の影響で音がどのように変わるのかはわかっていない。そこで本研究では先行研究で行われなかった弦の劣化と音の関係について検証した。

ギターをA、B、Cの3種類用意する。同じタイミングでコーティング弦であるELIXIR(エリクサー)を貼り、測定時にチューニングを行う。ギターAは、練習で使い、その後は普段通り張力を緩める。ギターBは、張力を緩める以外は何も行わない。ギターCは、チューニングをするだけで何もせず、ただ録音だけを行う。3か月経過した後、ギターAに通常の弦であるERNIE BALL(アーニーボウル)を貼り換え、前後の3か月での音の違いをみる。

録音に関しては、限りなく先行研究と同じ条件にするため、弦を糸で引っ張り、それを切ることによって撥弦する。そして撥弦した際の音をAudacityで録音する。毎週それぞれの条件で録音を行い、データを集計する。

同じ日に測定した倍音レベルの時間変化が大きく異なっていたため、この測定方法には再現性がないことが分かった。時間経過による倍音のレベルの変化はどのギターにもみられたが、それが劣化による音の変化なのか、条件による違いなのか、単純に撥弦する力の差によるものなのかを断定できなかった。このように本研究では信憑性のあるデータを集計することができなかったため、大きな課題として確実な再現性を持つ実験方法を模索することがあげられる。