楽曲特徴量と楽曲印象評価の比較分析 [東京情報大学] [西村ゼミ卒業論文概要集] [年度ごとの一覧]
2024年度西村ゼミ卒業論文
楽曲特徴量と楽曲印象評価の比較分析

楽曲は、人々に感情やイメージを喚起させる力を持つ芸術であり、喜びや悲しみ、力強さなどといった感情的な印象として、我々の心に深く刻まれる。しかし、こうした「印象」は、果たしてどのように生じ、またどのように分析され得るのだろうか。

本研究では、被験者の楽曲に対する主観的な印象評価と、楽曲の特徴を多岐にわたって算出することが出来るjSymbolic2の機械的な評価という二つの観点から捉え、楽曲の印象とその楽曲の特徴量との関連性を比較し、分析を行った。また、楽曲特徴量と印象評価の関連性について先行研究と比較することも目的とする。

実験に使用する楽曲は「RWC研究用楽曲データベース:ポピュラー楽曲」からジャンルの偏りがない物を10曲選定し、また、各楽曲の印象が一定になるよう曲の長さを冒頭から約40秒に編集した。被験者として、20代の男女10名を対象とし、1週間の間隔を空けて、同じ印象評価実験を2回行い、被験者ごとに全楽曲の1回目と2回目の印象の相関を求め、相関係数が0.47以上の8名のデータを今後の結果と分析に使用した。

全体的に「穏やかさ」「陽気さ」「興奮」「力強さ」が曲により印象が大きく異なる評価をされていることが見受けられ、「厳格さ」「憂鬱さ」などは比較的低い評価を受けていることが分かり、また、「憂鬱さ」と「憧れ」はどの曲も評価値が近く、どの曲も被験者に同じ印象を与えている可能性がある。

印象評価実験の結果から楽曲ごとに印象評価項目ごとの平均を求め、その結果と抽出した特徴量の結果の相関を求めた。その結果、音符の数が多い、あるいはテンポが速いため音符の数が多い楽曲ほど、「陽気さ」「興奮」「力強さ」といった印象が強くなる傾向が見られ、「興奮」は先行研究と一致する結果となった。短調だと「風変り」「力強さ」の印象が強い曲であると言え、長調の楽曲は「穏やかさ」の印象を与えやすくなる。また、音の数が少ない曲は穏やかな印象を与えやすいことがわかったが、先行研究ではこれらの対応は示されておらず、異なった結果になった。

特徴量や印象語については、先行研究を基に選定したため、先行研究と本研究で分析対象としなかった他の特徴量や印象語での実験をすることでより包括的な分析が可能となると考える。また、先行研究との違いとして、使用した楽曲の長さや楽曲数、被験者の人数、楽曲の分析方法など、実験条件が異なる点が多いため、これらの要因が結果に影響を与えた可能性も検討する必要がある。