音楽聴取後における認知能力への影響 [東京情報大学] [西村ゼミ卒業論文概要集] [年度ごとの一覧]
2023年度西村ゼミ卒業論文
音楽聴取後における認知能力への影響

「モーツァルト効果」とは、ローシャーらにより、1993年にイギリスの科学雑誌「Nature」で発表されたことが発端である。彼らは音楽が知能に及ぼす影響を調査するため大学生に、@モーツァルトの「2台のピアノのためのソナタ」、Aリラクゼーションテープ、B無音状態での待機の3条件を、それぞれ10分間聴取した直後に知能検査を実施するという実験を行った。その結果モーツァルト曲を聴取する条件で、空間的知能を測定する空間的推論問題の得点が他の2条件に比べ、8〜9ポイントの有意な上昇を確認した。ただしその効果は聴取後15分程度の一時的なものであった。それが「モーツァルト効果」の本来の内容である。そこで、本研究の目的は、音楽を聴いた後に認知能力に及ぼす影響を詳しく調査することである。

この実験では、被験者はモーツァルトの音楽を聴取する条件、好きな音楽を聴く条件、そして無音条件のいずれかを5分間行った後、2つの知能検査のいずれかを実施した。さらに、先行研究における順序効果や音楽の効果が切れてしまう15分という時間に関して懸念したうえ、音楽聴取後1種類の知能検査を行う実験を行った。被験者の行った課題の成績について、3つの音楽条件における認知能力の違いを明らかにするために、音楽条件と課題条件を要因とした二元配置分散分析を行った。

結果としてこの研究では、モーツァルトの音楽を聴きながらの課題遂行が他の条件よりも有意に成績が高くなる傾向にあるにことが示された。しかし、今回実験に協力してくれた被験者男子大学生10人だけでは十分なデータが集まったとはいえず、男子大学生以外のデータが必要である。また、特定の課題に焦点を当てた結果であり、他の課題や認知機能への影響には不透明な点がある。