先行研究では、ライブ映像の照明色の違いが音楽の印象に及ぼす影響について、白い照明色が使われたライブ映像に照明色を着色したものを使用して実験を行い、考察していた。この研究では、照明色の違いによる音楽の印象の比較が行われているが、被験者が色自体に対して抱いている印象はわかっていない。また、ライブ映像を使用しているため、演者や画面の動きがある映像が音楽の印象に影響を与えたのではないかと考えられている。
本研究では、映像は使用せず、音楽から歌詞のない部分を抽出したものを使用し、音楽を聴いたときに受ける印象と、そのときにイメージした色について調査を行った。加えて、色を見て受ける印象についても調査を行っており、これらの分析の行うことで、音楽と色と印象の3つの関連性を明らかにすることができるのではないかと考えた。
実験では、被験者は、20代の男女10名で、実験を行う前に簡易的な色覚の検査を実施し、その後、色の印象評価、音楽の印象評価と音楽を聴取した際にイメージした色の調査を行った。色の印象評価は15色で行い、音楽聴取時にイメージした色を選択する際には、色の印象評価を行った15色を含む41色で行った。このとき、色の提示には新配色カード 199aを使用している。使用楽曲は12曲で、印象評価をする際の色の提示、楽曲の再生はランダムな順番で行い、それぞれ2回ずつの計4回実験を行った。
これらの実験で得られた結果から、色の印象評価や音楽の印象評価、音楽聴取時に選択した色についてそれぞれの相関を求めることで、音楽の印象と音楽聴取時に選択した色の印象に相関があるのかを分析した。
今回の実験結果から、色には印象評価をする際に1回目と2回目で印象が変化しにくい色と印象が変化しやすい色があり、暖色系、寒色系の色と比較して、中性色系の色は印象が変化しやすいのではないかと考えた。音楽の印象評価についても、1回目と2回目で印象が変化しにくい楽曲と印象が変化しやすい楽曲があり、この要因には音楽の展開の仕方が挙げられるのではないかと推測した。
今回行った分析より、音楽の印象が似ているからといって、似た色、色相、彩度の色を選んでいるとは限らない、ということが判明した。また、音楽の印象評価と音楽聴取時に選択された色の印象評価に相関がある場合もあり、これは、楽曲と色に対し、似た印象評価が行われている、ということである。対して、音楽の印象評価と音楽聴取時に選択された色の印象評価に相関がない場合もあり、これは、楽曲と色に対し、似た印象評価が行われていない、ということである。このような結果になる理由として、音楽の印象評価をする際に安定した印象評価ができるかどうかということが、音楽の印象評価と音楽聴取時に選択された色の印象評価の相関に影響しているのではないかと考える。