現在の部屋の防音環境を整えるためには壁に吸音材や遮音材を貼ることや床にカーペットやマットレスを敷くことが挙げられる有名な方法だが、ドアの防音方法はどうすれば良いのか調べたところ防音ドアを設置することが手早くできる方法だと分かった。しかし、防音扉を導入することは難しい。よって安価で簡単に買える道具を素人である著者が吸音・遮音処理することでどの程度遮音効果が得られるか調べることにした。用意する道具は遮音ボード、遮音シート、吸音材、隙間テープを選択した。
実験で使う音源は125Hz,250Hz,500Hz,1000Hz,200Hz,4000Hz,8000Hzの周波数を中心とするオクターブバンドノイズをループできるように作成した。扉から1m離れたところにスマホスタンドを設置し、倉庫の中からそれぞれの周波数の音を再生して10秒間測定した。その周波数の音圧レベルの平均値を倉庫の中と外で記録することで、音圧レベルの差を取った。この差を比較することで、遮音性能をどれだけ得ることができたか調べた。合計で12通りの音圧差を調べることができた。
比較した結果、音圧レベルで約5dB〜16dBの差が出ていることから、遮音・吸音処理の効果があることが分かった。また、低音よりも高音のほうが遮音されている傾向があることがわかった。通風孔を埋めたとき、遮音効果が得られた周波数と得られなかった周波数の音圧レベルの差が大きかった。また、吸音材を貼ったときに全ての周波数で大きい遮音効果が得られた。しかし、遮音シートを貼ったとき、隙間テープを貼ったときは遮音性能の向上が見られなかった。今回の実験では吸音材を貼った結果最も大きい遮音性能を得ることができた。
通風孔を閉じる行為は扉の穴を塞ぐことができるので実験前は最も効果が高いと考えていた。あまり遮音効果が得られなかった理由として音圧差が小さい周波数は通風孔の影響を受けておらず、通風孔の開閉で遮音性能に変化がなかった可能性と、通風孔をうまく閉じられず、隙間があった可能性がある。通風孔の構造を調べ確実に埋め込めるように遮音ボードを作るべきであった。また、測定の信頼性を高めるため同じ条件下で2回測定を行う必要があった。
隙間テープは扉とその枠組みの間の隙間を埋められるため遮音効果が大きいと考えていた。今回遮音効果が得られなかった理由として、そもそもその隙間が空いていなかったということが考えられる。今回実験で使った扉は厚みがあるため、枠組みと接している部分が大きく、隙間が2~3oしかない構造になっていた。この構造の扉では隙間テープを使っても遮音効果の向上が見られないことがわかった。
今回実験で使った扉は金属製であり、厚みがあったため一般の住居にあるような扉ではなかった。そのため、今後、この実験を発展させるためには、扉と枠組みの間の隙間が3cmほどある扉、もしくは、木製の扉や模様ある扉、ガラスがはめ込まれている扉などを使用すると、一般の住居で遮音効果を高めるための知見を深めることができると考えられる。