イヤホンなどの音響再生機器の音質には周波数特性を始めとした様々な物理特性が影響しており,イントラコンカ型イヤホンを用いて実験では最も人に好まれる周波数特性を求める実験が行われてきた。一方で骨伝導イヤホンの周波数特性に関する研究は行われておらず,周波数特性も明らかにされていない。
本論文では四種類の骨伝導イヤホンの周波数特性を求め,周波数特性という観点で骨伝導イヤホン同士を比較できるようにし,主観評価と周波数特性を合わせて何かしら傾向がみられるのかを明らかにするためのものである。
第一の実験では骨伝導イヤホンで1000Hzのノイズと,125,250,500,2000,4000,8000Hzのノイズが同じ大きさに聞こえるようにアンプのボリュームを調整し,その時のアンプのボリューム値を記録する。その後,骨伝導イヤホンの1000Hzのノイズとヘッドホンの1000Hzのノイズの大きさが同じ大きさに聞こえるようにボリュームを調整した後に,ヘッドホンをダミーヘッドに装着して音圧レベルを測定し,アンプのボリューム値とダミーヘッドで表示された音圧レベルを記録する。調整されたヘッドホンの1000Hzのノイズと,125,250,500,2000,4000,8000Hzのノイズが同じ大きさに聞こえるようにボリュームを調整し,ダミーヘッドで音圧レベルを測定する。この時のアンプのボリューム値とダミーヘッドで表示された音圧レベルを記録する。1000Hzを基準とした際に骨伝導イヤホンの各周波数で同じ大きさで再生するには何dB差があるのかを計算で求め,この数値をダミーヘッドで測定した音圧レベルから引くことで骨伝導イヤホンの周波数特性を求めた。ダミーヘッドでの測定の際に音圧レベルの数値が変化してしまい,信頼性が欠けてしまうため,人工耳で再度測定を行った。
第二の実験では骨伝導イヤホンで音楽を聞き比べてもらい,最も良い評価のイヤホンと最も悪い評価のイヤホンを答える実験を行い,第一の実験と合わせて周波数特性と主観評価の関係に傾向が見られるのか考察した。
第一の実験では,被験者の音の大きさ調整に再現性のある結果が得られ,骨伝導イヤホンの周波数特性を求めることができた。四種類の骨伝導イヤホンの周波数特性は125Hzが最も強く,250Hzから8000Hzでは変化が少ない特徴が確認できた。第二の実験では主観評価実験内でノイズが入ってしまう不備があったため,周波数特性と主観評価を合わせた上での傾向は分からなかった。今後の展望として第一の実験では被験者数の増加を行い,人によってどれだけ周波数特性に違いが生じるのかをより多く比較する。第二の実験ではノイズが入らないように配慮して実験を行う必要がある。