無音が与える映像作品の印象についての研究 [東京情報大学] [西村ゼミ卒業論文概要集] [年度ごとの一覧]
2023年度西村ゼミ卒業論文
無音が与える映像作品の印象についての研究

映画やドラマにおいては、クライマックスのシーン等において、心理的ショックを与えるために、BGMや効果音を無音に、または小さくする効果を活用することがある。《22年目の告白 -私が殺人犯です- (2017年)》(以下、殺人犯)では、男が元婚約者を殺害した犯人の首をケーブルで絞める場面で、男の婚約者との回想シーンにおいて、婚約者を失った無念、犯人に対する恨みを物語るために、無音の状態になっている。《新幹線大爆破 (1975年)》(以下、新幹線)では、新幹線の車両に爆弾を仕掛け、海外へ逃走しようとするところを警察が射殺する場面で、シーンがより印象的にし、むなしさを感じさせるために、画面を白黒へ切り替え、撃たれて倒れるまでの犯人の動きをスローモーションにし、一切の音をカットしている。これらの無音の演出の効果は、あくまで参考文献の著者の考えであり、同じシーンでの無音と音が入っている場合の印象に違いがあるかは、実験的に明らかになっていない。

そこで、クライマックスシーンで無音となる、二種類の映画のクライマックスシーンの映像を切り取り、無音のシーンを含む映像と当該のシーンに合うBGMや効果音を入れた映像を見せ、それぞれの印象を評価することで比較した。二種類の映画作品「新幹線」「殺人犯」を用意し、それぞれ編集していない映像、音を加工した映像を用意した。「新幹線」においては、新幹線車両に爆弾を仕掛けた犯人が、海外へ逃走しようとしたところで警察に射殺されるシーンであり、シーンの直前に流れていた挿入曲を追加した。「殺人犯」においては、男が男の婚約者を殺害した犯人をつきとめ、ケーブルで犯人の首を絞める場面であり、婚約者の思い出を回想するシーンにおいて小さい音で流れている心臓の鼓動の効果音の音量を大きくした。一週間以上空けて、「新幹線」「殺人犯」の加工していない映像、加工した映像をそれぞれ視聴してもらった。被験者により、呈示した映像の順序は異なり、順序は被験者ごとに指定して行った。各作品視聴後、締まり具合」「評価(好き嫌い)」「明るさの印象」「ユニークさ」「力強さ」「映像と音の調和度」の6項目を1〜7点の間で評価してもらった。

結果としては、加工していない映像、加工した映像印象評価の点数の差

には、「明るさの印象」を除きあまり差が生まれなかった結果となった。これには、クライマックスシーンに至った背景が分からず、評価が難しかったと言える。明るさの印象に差がついた原因としては、無音部分に入れた音楽と効果音の明暗により、映像作品の印象が左右された可能性もある。