楽曲の思い出の有無によって癒しの聴取嗜好に影響はあるのか [東京情報大学] [西村ゼミ卒業論文概要集] [年度ごとの一覧]
2023年度西村ゼミ卒業論文
楽曲の思い出の有無によって癒しの聴取嗜好に影響はあるのか

2017年に行われた大谷の研究は、「聴取経験がある」楽曲と「聴取経験がない」楽曲で癒しの聴取嗜好(癒されたい時に聴きたいかどうか)に影響を及ぼす印象の違いがあるのか、「歌詞がわかる」楽曲と「歌詞がわからない」楽曲で癒しの聴取嗜好に影響を及ぼす印象に違いはあるのかについて調査するものであった。また、楽曲を聴くことによる思い出の有無によって癒しの聴取嗜好に影響を及ぼすのかについても調査した。結果は、「楽曲に思い出がある」と回答した被験者が少なかったため、思い出の有無によって癒しの聴取嗜好に違いがあるかどうかの調査が不十分に終わった。

今回の研究では、楽曲の「思い出」の有無によって、癒しの聴取嗜好に影響があるのかを調査する。また、思い出がある楽曲では、癒しの聴取嗜好と思い起こされる際の思い出の種類や感情の種類の関連についても分析する。そのため、使用する楽曲は全て被験者が聴いたことがありそうなものを選曲し、被験者が聴取した曲に「思い出」がある場合が増えることを意図した。

被験者は、大学2~4年生の男性41名、女性2名の計43名である。実験内容は、各自イヤホンで聴いてもらい実験を行った。楽曲は合計10曲あり、冒頭から1番のサビ終わりまで、その後フェードアウトするように編集した。再生順序はランダムとし、1曲聴取ごとに曲の印象、楽曲に思い出があるか、思い出があった場合はその種類と感情のアンケートに回答してもらう。評価アンケートは、楽曲聴取の途中から評価を行ってもよいものとした。

結果は、全体的に思い出のある楽曲の方が思い出の無い楽曲より、癒されたい時に聴きたい傾向にあることがわかった。特に、「千本桜」「3月9日」「Pretender」はt-検定によりこの傾向が有意であった。

思い出の種類は、青春・友情・卒業の思い出を思い起こす人が多く、思い出の感情では、思い起こす感情は全体的に明るい感情が多かった。

印象の度合いの平均値間との相関分析では、貧弱・悲しい・ありふれた印象が多いほど、癒されたい時に聴きたいということがわかった。印象の度合いの平均値と思い出の種類を挙げた人数との相関分析では、卒業の思い出がある人が多い楽曲ほど、癒されたい時に聴きたいということがわかった。印象の度合いの平均値と思い出の感情を挙げた人数との相関分析では、幸せ・喜び・悲しみの感情を思い起こす人が多い楽曲ほど、癒されたい時に聴きたいということがわかった。