音は目には見えないが、その影響力は大きいと著者はそう思っている。映像作品における効果音は、視聴者に深い印象を与え、視覚だけでは伝えることのできない感情や雰囲気を伝えることができる。著者でもこのような影響力のある音を作り出せるのではないかと思った。
今回の研究は先行研究を基に実験を行った。基礎的な学習を経た素人が、映像と調和し違和感を感じさせない効果音の制作が可能であるか、またそのような自作効果音と他者制作の効果音との間に存在する差異について検討した。先行研究では身近な道具を使用し効果音を制作し、他者の効果音と比較、評価した。先行研究と本研究の主な相違点として、先行研究が本実験で使われていた映像は音がついていなかったので、比較評価に使う効果音は指導教員が制作したものだった。本研究では、実際のプロが制作した効果音との比較評価を行う。本実験を行う前に予備実験を実施し実験方法の改善点の確認を行い、効果音制作に関して素人である自身の編集技術向上を行った。
予備実験では、NHKクリエイティブライブラリーから音がついている映像を使用した。予備実験ではネット上のフリー音源を調整し、効果音の制作を行った。著者が制作した効果音と本来の効果音との違いを比較、評価するために主観評価実験を行った。比較方法として、8人の被験者にプロと自作をそれぞれ絶対評価した後に相対評価してもらった。その結果、自作は映像の世界観に深く関わる「迫力」「斬新さ」「立体感」「臨場感」といった要素において評価が低いことから、効果音の元となる音源を慎重に選択し、強弱変化に注意することが必要であると考えた。同じ動きに対する音の種類を多様にするため、音に適切な調整を加え、同じ音の使い回しによる不自然さや違和感を避けることも重要であると考えた。
本実験は予備実験と同じくNHKクリエイティブライブラリーから音がついている映像を使用した。映像は指導教員が選んで音声を取り除いた後、著者に効果音の制作を始めように渡された。ネット上にあるフリー音源は、調整しても映像に必ずしも適していないため、一部は著者が録音して調整することに決めた。予備実験と同様な主観評価実験を行い、11人の被験者に評価をしてもらった。その結果、自作の平均評価が予備実験より大幅に向上した。「綺麗」や「快い」を除く他の全ての項目はプロの平均値より評価が高い傾向にあった。予備実験で使用された映像においてプロの制作した音の方が高品位であるため、本実験に適しており、本実験で使用された映像の方が予備実験に適していた可能性があった。「好み」と「映像に合っているか」の評価について相関分析を行ったところ相関があり、映像に合っていると感じる効果音は好みである効果音ということが分かった。