2020年頃から新型コロナウイルスという感染症が流行りだし、その感染者拡大のリスクを抑えるため、様々な対策がそれぞれの場所で行われている。そこで複数人が集まるオフィスのデスクで、低コストな厚紙式の衝立を設置することにより、飛沫拡散防止と同時に周りに聞こえる音をどれだけ遮音することができるのかと思った。もし効果に期待ができればオフィスのデスクでもオンライン会議がしやすくなり、周りのデスクに聞こえてしまう音を小さくすることができる。
この研究は会社のオフィスのデスクで設置する衝立による音圧レベルの変化を可視化し、どの方向や組み合わせで衝立を設置するとどのくらいの音圧レベルを下げることができるのかを調べる。厚紙の衝立は音圧レベルがなるべく下がることが望ましく、アクリル板の衝立は対面して話すことを想定し音圧レベルが下がらない方が望ましい。
実験方法は厚紙式の衝立を用意し、衝立を設置した時の話者と聴取者の位置での音圧レベルの差を調べた。厚紙式の衝立には吸音材がついているタイプと吸音材がついていない2タイプを用意した。またアクリル板の衝立を設置した場合の音圧レベルの変化を分析するために向かい合ったデスクの境目に設置し分析した。音源はピンクノイズを使用し、話者の位置でスピーカーより再生した。聴取者の位置で音圧レベルがA特性で65dBになるよう音量を調節し、聴取者の位置に置いた全指向性マイクで録音した。録音した音は3分の1オクターブ分析し、衝立がないときに比べ衝立を設置した時の音圧レベルの差を比較した。
各条件(聴取者の位置が話者の前・斜め前・横)で得られた実験結果は、どの条件でも話者の位置に衝立を設置することで音圧レベルが下がった。聴取者が正面の場合が最も下がり5000Hz以上で約10〜15dB以上の音圧レベルを下げる効果が得ることができた。音圧レベルを少しでも下げたいと思う場合、音源の前に衝立を設置することで効果があった。音源(話者)の前に衝立を設置することで315Hzから徐々に音圧レベルを低下させる効果があり、吸音材を付けることで全方向5000Hz以上で最大約+5dBもの音圧レベルの低下が見込めた。コストをかけ聴取者の位置にも吸音材ありの衝立を設置しても音圧レベルを下げることはできるが、2〜3dBほどしか変化がなく、音圧レベルが下がった効果を実感しにくいことが分かった。アクリル板の衝立は、衝立なしと比べ音圧レベルを少し下げてしまい、全く下げないという望ましい結果には至らず、4000Hz以下では衝立がないときに比べ最大で約7dBの低下があった。