スネアの打叩タイミングずれに対する演奏音識別 [東京情報大学] [西村ゼミ卒業論文概要集] [年度ごとの一覧]
2022年度西村ゼミ卒業論文
スネアの打叩タイミングずれに対する演奏音識別

ドラムスの演奏音の時間的逸脱、音の強弱など演奏上の操作によるノリを作ることで、現代のポピュラー音楽にはグルーヴ感と呼ばれるものが生み出されている。宮丸友輔らは、ドラムス演奏者をはじめとする19歳から37歳のアマチュアの楽器奏者を対象に、ハイハットのアクセントとスネアの時間的逸脱の変化により演奏にドライブ感、レイドバック感の2つを感じたかを調査する実験を行った。結果、ハイハットに表拍のアクセントがある条件で、スネアが正しいリズムより早く打叩されたときに強いドライブ感、遅く打叩されたときにわずかなレイドバック感が向上すると明らかにした。しかし、スネアの打叩タイミングの逸脱を音楽経験の有無にかかわらず識別できるのか、またドラムスの音源によってその結果に違いが生じるのかについては調べられていない。

そこで、ハイハットのアクセントが表拍にあるときにスネアの打叩タイミングが逸脱したとき、違いを識別できるか調べた。また、音源素材(ベーシックなドラム音源と電子ドラム音源)の違いにより識別に差が生じるかについても調べることを研究の目的とした。

演奏パターンは正しいリズムでスネアが打叩されるもの(A)、リズムに対し20ms早く打叩されるもの(B)、リズムに対し20ms遅く打叩されるもの(C)の3つを用意し、2種類の音源を用意したため計6種類の音源を用意した。AXB法(A,B,Cから2つを選択(AとB,AとC,BとC)し、選択された2つのうちどちらか1つを再度再生する計12通り (AAB,ABB,BBA,BAA,BBC,BCC,CBB,CCB,AAC,ACC,CCA,CAA)の再生パターンをランダムな順序で聴く)を用いて聴取してもらい違いが判るかどうかの実験を行った。被験者は、楽器経験者7名(うち1名はドラムス経験者)、未経験者3名、計10名で、日を分けて4回行い各条件16回、あるいは20回判断するようにした。

正しいリズムでスネアが打叩された演奏と20ms遅れてスネアが打叩された演奏は有意に聞き分けている被験者が多く、違いがわかりやすいということが分かった。リズムに対し20ms早く打叩されるものとリズムに対し20ms遅く打叩されるものの演奏を識別する条件では、有意に聞き分けている被験者が少ないことも分かった。楽器経験者は半数以上の条件で有意に識別できた。一方、楽器非経験者は有意に識別できる1名とできない2名がいたため、経験者はスネアの時間的逸脱の識別能力が高いと思われるが、非経験者であっても識別できないとは言えないと思われる。また、音源ごとの被験者全体の平均正答率が異なった。特に、有意に識別した被験者数の少ない0-20の条件の場合ではベーシックなドラム音源のスネアの減衰時間が長い(約50ms)ため、早い打叩の認識が曖昧となり、音の逸脱を認識するのが難しかったのではないかと考えた。