音楽中のベース音レベル差弁別とその訓練効果 [東京情報大学] [西村ゼミ卒業論文概要集] [年度ごとの一覧]
2022年度西村ゼミ卒業論文
音楽中のベース音レベル差弁別とその訓練効果

聴能形成とは音に対する感性を修得し、音の大きさや違いを聴き分けることができるようになる訓練方法である。自身がベースの演奏経験があり、ベースの音が「分からない」、「聴こえない」と言われることがあった。この経験から聴能形成をベース音弁別に応用し、訓練を行うことでベースの音が分かるようになるのか、小さな音圧レベル差でも聴き分けることができるようになるのかを知りたいと思い、本研究を行った。

楽曲はRWC研究用音楽データベース:ポピュラー音楽データベースから楽曲番号70号(楽曲1)と49号(楽曲2)の2曲を選択した。被験者は東京情報大学の音響ゼミに所属する12名である。被験者を6名ずつに振り分け、楽曲1から実験を行う被験者をAグループ、楽曲2から実験を行う被験者をBグループとした。実験は聴覚訓練システムを使用する。選択した音源をそれぞれベース音のみ+1dB、2dB、4dB、6dBの4つとなるように作る。実験手順は、2回連続で楽曲が再生され、最初より後のベースの音圧レベルが高いか低いかをUPかDOWNのボタン形式で答える。1〜6dB差の前後をいれかえ、ランダムで各4回の16回再生されるようにし、16回を1日1セット、計3回行う。1曲目が終わり次第つぎの楽曲で訓練を行った。

その結果、Aグループの1曲目と2曲目、Bグループの2曲目の3条件間に正答率の差はみられなかった。そして、Bグループの1曲目と2曲目を比べると2曲目の正答率が高く、2dB差に有意差があった。さらにAグループの1曲目とBグループの1曲目を比べるとBグループの1曲目の方が正答率が低く、2dB差に高い有意差があった。これらのことから実験結果には、楽曲1より楽曲2の方がベース弁別が難しかったこと、AグループとBグループでベース音を聴き分ける能力に差があったこと、繰り返し訓練を行うことで音に対する感性が高まり、弁別能力が向上したことの3つの要因が影響しているとわかった。