楽器演奏と演奏の正確さによるストレス変化 [東京情報大学] [西村ゼミ卒業論文概要集] [年度ごとの一覧]
2022年度西村ゼミ卒業論文
楽器演奏と演奏の正確さによるストレス変化

ストレスの解消においては音楽聴取が有用と考えられている。私は音楽を聴くことでリラックス効果があるなら、演奏者にもリラックス効果があるのではないかと考えた。本実験では、曲を演奏することによって生理的側面と心理的側面でストレスが緩和されるのか。また、演奏の正確さによってストレスに変化があるかを調べることを目的とした。

被験者は東京情報大学の学生8名に依頼した。演奏する楽器は鍵盤とタブレット型電子楽器の2つを使用した。演奏する課題曲として3曲を被験者ごとにランダムな順番で利き手のみで演奏してもらった。実験は2日間に分けて行い、1日に1つの楽器で「春が来た」「翼をください」「実験用課題曲」の3曲を演奏してもらい、各曲の演奏の間に3分の休憩時間を設けた。評価方法は心拍数、演奏の正確さ、POMS(感情プロフィール検査)簡易版である。実験の流れは、心拍の測定は実験開始から実験終了するまで計測を行った。10分間の課題曲演奏練習を行い、その後演奏の正確さを測るためメトロノームに合わせて2回の演奏をしてもらった。そして、心拍数の測定開始時と演奏終了後の3分間にPOMSの回答をしてもらった。

課題曲3曲の測定開始から128秒間、演奏開始から256秒間、演奏終了から128秒間の心拍数の時間変化からストレス指標(LF/HF)を導出し分析した。心拍数のストレス指標はストレスが緩和されると値が低くなる。演奏する楽譜の音価からIOIの誤差の絶対値の平均を導出した。数値が低いほど発音時間間隔が正確であると評価される。楽譜を元にした音高と演奏音の音高と音価の正確性を表す発音正解率を導出した。発音正解率の数値が1に近いほど発音が正確になる。IOIの誤差の絶対値の平均と発音正解率を演奏の正確さの指標とし、ストレス指標との相関関係があるのかを分析した。

その結果生理的側面(ストレス指標)と心理的側面(POMSの回答)において楽器演奏によるストレスの緩和は見られなかった。また、演奏の正確さとストレス指標には有意な相関がなく、演奏の正確さとストレスには関連が見られなかった。