イヤホンの周波数特性と音質評価について [東京情報大学] [西村ゼミ卒業論文概要集] [年度ごとの一覧]
2022年度西村ゼミ卒業論文
イヤホンの周波数特性と音質評価について

先行研究では、正面方向にスピーカーがある場合のHRTFに近い周波数特性をもつイヤホンは

音質が良いとのランク付けをし、さらに聴取実験からそのランク付けはイヤホンの評価として差し支えないということが示されていた。ならばランクの低い粗悪なイヤホンの周波数特性をそのHRTFに近いものにすることができれば、ランクの低い粗悪なイヤホンでもいい評価を得られるのではないかと思い、本実験で検討してみた。具体的にはそのHRTFから大きく外れている周波数の部分を、音源にイコライザ補正をかけてそのHRTFに近づけてあげる方法で本実験では検証してみることにした。

補正の仕方は、無響室でダミーヘッドの正面1mの位置にスピーカーを置き、ホワイトノイズを用い1分間測定し、その後ダミーヘッドをコンデンサーマイクに変え測定した。測定した周波数特性の差が今回用いたHRTFになる。その後、黒イヤホン(Olympus製)と白イヤホン(Apple製)をダミーヘッドでホワイトノイズを用いた周波数特性の測定をし、そこからHRTFから離れている周波数部分をAudacityでイコライザを用いてHRTFに近くなるような補正を作成した。(今回は条件2黒イヤホンと条件4白イヤホンの補正を作成)その後実験用の音源に補正をかけて実験用の音源とする。その後すべての条件の音源が同じような音の大きさになるようAudacityのラウドネスノーマライズ機能を用いて調整し、実験用の音源とする。

聴取実験の被験者は、本研究室の学生10名である。音源には、米津玄師より"Lemon"の1番のサビを15秒間用いる。実験手順は以下の通りである。

1.まず、被験者は一方の条件のイヤホンの聴取を行う。

2.続いて、他方のイヤホンの聴取を行う。

3.前と後のイヤホンを比較し、前に比べ後のイヤホンが「好み」であったかどうか、「好き(2点)、まああま好き(1点)、同じ(0点)、まあまあ好きではない(-1点)、好きではない(-2点)」の5段階で評価を行う。

以上の手順を、5つの条件のすべてのパターンで行う(2条件の選び方は再生の前後入れ替えを含むため、20通りある)。聴く条件の順番も被験者ごとにランダムで行う。

今回の実験では、HRTFに近づける補正を行うことによる質の低いイヤホンの評価の向上は見られなかった。その原因として大きく考えられるのが、HRTFの補正がうまくできていなかった可能性があり、見直すべきであった。好みの傾向は、被験者グループごとに好みの違いが存在しグループ1と2の被験者は評価の傾向が全く異なるといえ、個々人の評価の仕方または好みにより、大きく違いが生じてしまうことがわかった。