先行研究では、市販されている様々なジャンルの視聴覚素材を調和のとれたオリジナル素材と調和を意図的にずらした組み合わせ素材を用いて印象評価実験を行った。その結果、オリジナル素材全体の調和度は組み合わせ素材全体の調和度より高い結果となった。また、映像の印象が音の印象に近づく共鳴現象が起こった。
今回の実験では、視聴覚素材をTVCMに変え、それらの印象に音がどの程度影響しているのかを明らかにすることと、映像と音の合っている度合いと映像と音の印象の似ている度合いは、どの程度関係しているのかを明らかにすることを目的とした。
被験者9名に映像のみ、音のみ、それらを同時の3条件で8種類のCMをPCより提示し、9つの対になる評価用語を用いてそれぞれの印象評価を行った。映像と音を同時に提示した条件のみに映像と音の合っている度合いの評価も行った。その結果、CMの印象は映像の印象よりも音の印象に近かった。
次に、CMごとに映像と音とそれら同時それぞれに対する印象について、相関分析を行った。その結果、音のみと同時の相関係数は全体的に高く、映像と同時の相関係数は、音のみと同時に比べて低いことからCMの印象は音の印象に近いことが確認できた。また、映像と音の合っている度合いと映像と音の似ている印象の度合いとなるそれらの相関係数との相関分析を行った。その結果、映像と音の合っている度合いと映像と音の印象の似ている度合いは、関係していないことが明らかになった。