今回の実験では、「飲食店における快適なBGMの音量の調査」[1]と「医療施設における快適なBGMの音量の調査」[2]を参考に行った。この研究では飲食店・医療機関における快適なBGMの音量の調査を目的とし、それぞれの環境で心地よいと感じるBGMの音量を調整してもらい、その数値を測定する実験を行った。
その結果、店内の騒音(雑踏やお客様の話し声など)に対応して快適に感じるBGM音量は変化することがわかり、さらに年代や性別によって快適なBGM音量が異なることが分かった。
本研究では、被験者の好みによって快適なBGMの音量が変わるのかを調査することを目的にした。過去の研究では1曲で実験を行っていたので、本研究ではUSENから提供してもらった飲食店用の有線放送番組5つより各1曲、医療機関用の有線放送番組5つより各1曲の合計10曲を用意し、より詳細な快適なBGMの音量を調査した。
被験者は学生13人を対象にし、飲食店に1人でご飯を食べに来ている、医療機関に風邪気味で診察を受けに来ているという想定をしてもらい実験を行った。実験は2日に分け、飲食店では等価騒音レベル55dBと65dBの2条件で快適なBGMの音量を5曲ずつ調整してもらった。そして別の日に医療機関では等価騒音レベル53dBと60dBの2条件で快適なBGMの音量を5曲ずつ調整してもらった。
その結果、飲食店では「アイム・カミング・ヴァージニア」は「スター・アイズ」「シュガー・バディ」「ベター・デイズ」に比べ、約4dBほどBGMレベルが大きかった。その理由は弦楽器で音楽が奏でられているため、ほかの曲に比べ騒音が聞こえやすくなり、このような結果になったのではないかと考えた。このことから曲の特徴によってBGMレベルが変わった可能性があることがわかる。
医療機関では「ロータス・ブロッサム」のBGM音量が他より高く、その理由は、ジャズというジャンルで、テンポが不規則なため、騒音が聞こえやすくなりBGM音量が高くなったのではないかと考えた。しかし「ロータス・ブロッサム」と「花水木の咲く頃の」のBGMレベルは最大2.9dBの差しかないため、大きな違いではない。
飲食店・医療機関のどちらの環境においても、騒音上昇に対して最適BGMレベルの上昇は同程度であった。いずれの音楽についても飲食店では10dBの上昇に対し6dB、医療機関では7dBの上昇に対し5dBであった。このBGMレベルの上昇は過去の実験結果と同じであった。