先行研究では、Mac Book Proに搭載されているMIDI音源の中から26の楽器の音高が異なる3つの単音を個々で聴き、暖色系と寒色系合わせて7色相の色、それぞれの楽器音がどの色にイメージされたかを調べる実験を行った。その結果、音色を構成する要素であるスペクトルと平均持続時間が音色からイメージする色に関わっていることが分かった。また、音高が高いほど、イメージされる色彩の明度が上がる以外、個々の音色の構成要素と明度との関係においては特徴的な違いは発見できなかった。本研究では、マイクロソフトGS音源の楽器音について、和音および単音を聴いた場合に、連想する色が異なるかを明らかにすることを目的とし、実験を行った。
実験は、モニターが正面にあるように椅子に座り、色の違いを区別出来るかを確認する為、「色覚異常テスト」を4問行い、全て正解すれば次の実験に進んだ。先行研究では楽器の種類が26種類と多いので、7種類の色ごとに、特定の色に印象が合うと回答が最も多かった、7種類の楽器を選択した。色覚異常テストに全て正解した被験者は、ヘッドフォンを装着し、1つの音ごとにどの色がイメージされたか、前のモニターに表示された、白と黒の無彩色を除いた提示色の中から1色選択し、その明度も選択した。1度の実験では、4種類の和音と1種類の単音、7種類の楽器、計35音を聴いてもらった。色の選択に違いがあるかを調べるため、日を明けてもう1度行い、合計2回行った。1回目と2回目で、再生する楽器の順番を変更し、楽器名から色(例:トロンボーンなら、金色だから、近い色の黄色)を連想されないように、楽器名は全て伏せて行った。被験者は、西村ゼミに所属している、3年生5人と4年生6人の計11人で行った。
分析の結果、単音で多く選ばれる色と、和音と単音を合計して一番多く選ばれた色を比較した結果は7種類の楽器中5種類で、だいたい同じとなり、グロッケンシュピールとシタールは、それらが異なることが分かった。また、選ばれた色の回数は、アコースティックピアノは橙色と黄色に、トロンボーンは黄色に集中していたが、それら以外の楽器は、和音や単音で選ばれた色に一定の傾向はなく、和音ごとで多く選ばれた色に違いがよく見られた。さらに、全ての楽器音に対して、選ばれた色の合計を見ると、長三和音と単音は、暖色系の色が多くえらばれ、短三和音とマイナー・セブンス・コードの方が、寒色系の色が多く選ばれる結果となった。