高価な単体マイクロホンには特性(周波数特性、指向性パターン)などが記載されているが、スマートフォン内蔵のマイクロホンには特性(周波数特性、指向性パターン)などが記載されていない。スマートフォンのマイクロホンの特性(周波数特性、指向性パターン)は、音波通信(16~20kHzを使ってディジタル通信すること)を利用する音アプリがしっかり機能するかどうかを左右するため、これらを測定によって明らかにする必要がある。
この研究はスマートフォンのマイクロホン特性(周波数特性、指向性パターン)を測定することを目的とする。
測定方法は、まず最初にスピーカーの特性をなくしたピンクノイズを作成する。その作り方としては、まず最初にスピーカーでピンクノイズを再生し、コンデンサーマイクで録音する。その録音したピンクノイズを1/3オクターブ分析を行い、1/3オクターブ分析した1000Hzのレベルから、それぞれの1/3オクターブ分析した周波数のレベルを差し引き得た数値をAudacityのイコライザーゼーションに入力する。次に、ピンクノイズにそのイコライザーゼーションを与えことで、スピーカーの特性をなくしたピンクノイズを作成できる。これを使ってスマートフォンごとの測定をする。その測定方法としては、スマートフォンの中心部分を中心として16方向に回転させ、それぞれの方向で先ほど用意したピンクノイズを録音する。次に、録音したwavファイルをDigiOnSound5で周波数分析を行い、その結果比較する。
測定結果は、iPhone5sの指向特性は、高域で少しのバラつきがある程度で、大きな差はなかった。次に周波数特性は、フラットで優秀である。iPhone8でも同じ特性が見られた。206SHの指向特性は、方向ごとのバラつきは最大10dB程度でiPhoneと大きな違いはない。周波数特性は、10kHzと12.5kHzが1kHzと比べて20dBほど尖っている特性である。次に、ZB551KLの指向特性は、高域にバラつきがあり差があった。周波数特性は、カマボコ型の特性を持っている。KYV31の指向特性は、高域でのバラつきが大きい。周波数特性は、他2つのAndroidと比べて一番フラットであることが分かった。
これらから、iPhone5sについて、マイクが付いている面がスピーカーに向いた時に、6.3kHz~20kHzの感度が高い。iPhone8でも同じことが読み取れる。また、206SHとZB551KLもマイクが付いている面がスピーカーに向いた時に、高域が強い指向特性を持っている。KYV31は、特定の方向で高域の感度が強いことはなく、実機でもマイクの位置を探したがわからなかった。