先行研究では、舞台照明の照明色の違いが音楽の印象に及ぼす影響を、シミュレーション実験で検討していた。演奏風景をコンピュータ・グラフィックスで合成し、照明色として白色を除く赤・黄・黄緑・緑・シアン(水色)・青・青紫・紫色を与えた。そして、同時に再生される音楽演奏音の印象評定実験を行った。先行研究で使われた音楽演奏音はクラシックのみで、演奏風景はピアノを演奏している様子を模したものが使われている。この研究では、照明色間の比較はできるが、白い照明色に対する色の印象の違いは判らなかった。
本研究では、コンピュータ・グラフィックスで合成した映像ではなく、白い照明色の使われたライブ映像に照明色を着色したものを使用し実際の演奏風景に近い形での実験を行った。この実験により、実際の演奏と同じような印象が得られるのではないかと考えた。
実験方法は、ライブ映像に色を着色し照明色を変化させ再生した。使用した映像は、赤・青・緑・黄・元の映像(白い照明色の使われた映像)・映像無しで音楽のみのもの、計6つを使用した。また、楽曲は計4曲を使用した。計6つの映像と音楽を4曲分ランダムに合計24回再生し印象を評価してもらった。評価方法は、評価用紙を用いた7段階評価を行った。実験時間は、実験説明を含め50分で行い、8回分評価が終了したら5分休憩をとるやり方をとった。被験者は、20代の男女10人で行った。
その結果、4曲共通して白の照明より青色の照明のほうが音楽の印象が暗くなった。また、3曲共通して緑色はぼやけた印象にすることがわかった。しかし、白い照明と比較して曲ごとにどの色がどの印象に影響するかは異なるという結果になった。また、映像無しで音楽のみのものより3曲共通して青色は暗い印象、緑色はぼやける印象になることがわかった。こちらも、曲ごとにどの色がどの印象に影響するかは異なるが、映像よりも色(照明色)のほうが音楽の印象に影響を与えることがわかった。
赤・青・黄色の照明色は、先行研究と同じく白い照明色を除く他の照明色と比べたときに、先行研究と同じ結果の赤色は迫力のある印象、青色は暗い印象、黄色は明るい印象となった。しかし、先行研究では緑色は明るい印象、本研究では暗い印象と異なる結果となった。