音楽によるSPI試験によって生じるストレスの緩和の可能性 [東京情報大学] [西村ゼミ卒業論文概要集] [年度ごとの一覧]
2017年度西村ゼミ卒業論文
音楽によるSPI試験によって生じるストレスの緩和の可能性

先行研究では、ストレス状態をサーモグラフィによる鼻部皮膚温度の測定から推測する研究を行った。被験者は、入室後10分間、室内環境に体温を完全に馴化させ安静を保った。実験開始時から5分間は、それまでと同様に安静を保った。次に、氷ブロックを持たせ氷刺激を開始した。この刺激を5分間継続し、その後氷を回収され10分間、再び安静を保った。氷刺激により、不安レベルが上昇した時、同時に鼻部皮膚温度は低下した。氷刺激停止によって、不安レベルが減少した時、同時に鼻部皮膚温度は上昇し始め、実験開始時と同程度まで達した。ストレス状態の測定には、STAI(日本語版状態・特性不安調査)を用いた。この研究により、鼻部皮膚温度が低下するとストレスを感じ、上昇するとストレスが和らいでいるという結果が得られた。

今回の実験では、音楽によりSPI試験によって生じるストレスが緩和されるかを鼻部皮膚温度の変化から調べることを目的とした。被験者は、入室後10分間、実験の説明とSTAIを実施しつつ実験室の環境に馴化させた。実験開始から5分間、被験者を安静な状態にした。次に、SPIの問題を抜粋しパソコンで作成したテストを5分間解いてもらった。その後、再び5分間、被験者を安静な状態にした。二度目の安静終了後、STAIを実施し実験を終了した。音楽を再生する条件と、全く音楽を再生しない条件の二通り行った。実験開始から二度目の安静終了までの15分間、ストップウォッチで時間を測りながら10秒間隔で被験者の鼻を含むサーモグラフィ写真を撮影した。

音楽なしの場合と音楽ありの場合の最初の安静時からSPI試験中にかけて鼻部皮膚温度が有意に上昇または有意な差が認められなかった被験者は、6人であった。このことから、鼻部皮膚温度によってストレスが測れるとした場合、SPI試験がストレッサーとして作用していなかったといえる。また、被験者2の音楽なしの場合、最初の安静時からSPI試験中にかけて鼻部皮膚温度が有意に上昇し、音楽ありの場合、最初の安静時からSPI試験中にかけて鼻部皮膚温度が有意に低下した。このことから、鼻部皮膚温度によってストレスが測れるとした場合、SPI試験と音楽を聞くことがストレスになっている可能性がある。 実験前後に行ったSTAIの結果を比較したとき、音楽なしの場合、STAIの得点が下がりストレス状態が緩和された被験者が4人、STAIの得点が上がりストレス状態が増した被験者が3人であった。音楽ありの場合、得点が下がった被験者が2人、得点が同点でストレス状態が変化しなかった被験者が1人、得点が上がった被験者が4人であった。このためSPI試験がストレッサーとして作用しているか、また音楽がストレス状態を緩和するかもわからなかった。

実験中にサーモグラフィカメラが不調で止まってしまい、データが欠損してしまった被験者が数名いたため、もっと被験者を集めて不測の事態に備える必要があった。