先行研究では、音楽聴取が正答率と集中力に及ぼす影響を、様々な音楽を使い、3桁×3桁のかけ算を被験者に行わせて調べた。その結果、音楽を聞くことで正答率に影響することはない、音楽を聞かない方が一番集中できるという結果が得られた。一方で、被験者人数を増やすことで、より結果に一般性を増すこと、また問題の難易度を下げて1問も答えられない被験者が出るのを防ぐ、と言う二つの改善点が考えられる。
今回の研究の目的は音楽聴取が集中力及び算数の問題解答時の正答率へ及ぼす影響を、改善点を踏まえた上で改めて調べることである。先行研究の3桁のかけ算問題は2桁に変更して難易度を下げ、被験者が1問も答えられないのを防いだ。そして被験者人数を増やし、より結果に一般性を増すようにした。使用する音楽はモーツァルト効果があると言われているピアノ楽曲と、普段の生活で聞いているだろう被験者の好きな曲を用いた。そして音楽無しの条件を合わせて、3つ音楽条件で、算数問題を行ってもらった。
回答数、正答数を音楽条件ごとにまとめ、音楽条件を要因に一元配置分散分析を行ったところ、音楽条件に差は無いという結果が出た。よって音楽が正答数と回答数に影響することは無い、ということがわかった。
曲の8つの印象評価と回答数、正答数についてそれぞれ組み合わせて相関分析した。その結果、先行研究では、その音楽を聞きたい-聞きたくないと集中できた-できない、の相関係数が0.93とほかの相関に比べて高かったが、今回は0.68と低かった。つまり先行研究より相関係数は下がっていたものの、聞きたい音楽ほど集中できることがわかった。そして、そのほかの相関係数は全て低かった。よって音楽の印象は、正答数や回答数に影響が無い、ということがわかった。