2種類のノイズキャンセリングヘッドホンにおける騒音低減効果の比較と測定方法の検証 [東京情報大学] [西村ゼミ卒業論文概要集] [年度ごとの一覧]
2016年度西村ゼミ卒業論文
2種類のノイズキャンセリングヘッドホンにおける騒音低減効果の比較と測定方法の検証

ノイズキャンセリング(ANC)機能を搭載した二種類のヘッドホンの比較を行った過去の研究の問題点として、騒音とみなしたピンクノイズ、ホワイトノイズ、人ごみの音、地下鉄の音の4つの音源ごとにANC効果に違いが見られた。これは外来雑音による影響とANC機能をONにした際のヘッドホンの装着具合のずれの影響ではないかと考えられる。そこで外来雑音とヘッドホンの装着具合によって、どれ程遮音効果に違いが見られるのか明確にすることを目的とした。

過去の研究との違いとしてPioneer製の代わりにmaxell製のヘッドホンを用いて実験を行った。外来雑音をなくすため、無響室で実験を行った。また、装着具合の違いによる影響を検証するため、実験が終わるまでヘッドホンを取り外さない実験と実験中にヘッドホンを付け直した実験の二種類行った。

この実験では過去の研究と同じ音源を、ダミーヘッドの左右に配置したスピーカーから流すことによって騒音環境を再現し、録音を行う。これをヘッドホンを取り外した状態とANC機能をON・OFFのそれぞれの状態で行った。実験中にヘッドホンを取り外さない実験ではすべての音源を取り終えるまで、ヘッドホンを付け替えないものとした。実験中にヘッドホンを付け直した実験ではANC機能をONにする際にヘッドホンを付け直すものとした。録音したデータは1/3オクターブバンド分析をし、装着していない状態と装着したのみの状態の差をヘッドホンの遮音効果とし、 ANC 機能 OFF と ON の差を騒音低減効果とした。

ピンクノイズとホワイトノイズを騒音源として行ったヘッドホンを終わるまで取り外さない実験での騒音低減効果は、maxell製ヘッドホンではほとんど見られず、SONY製ヘッドホンではいずれも200Hzで12〜14dB程の効果が見られた。また、過去の研究ではこれらの音源ごとに違いが見られていたが、今回の実験は無響室で行ったためか見られなかった。過去の研究では外来雑音が原因として考えられていたことを今回の結果から改めて確認した。

実験中にヘッドホンを付け直した実験では、騒音低減効果はmaxell製は1250〜20000Hzの間で音源ごとの違いが見られた。SONY製でも音源ごとの結果に差が見られた。ANC機能は原理上1000Hz以上に効果がないことが分かっているため、この結果はヘッドホンの装着具合の違いによって表れたと考えられる。また、SONY製の315〜800Hzの間での音源ごとの差は、ANC機能の特徴が表れた可能性と、ヘッドホンの装着具合の違いによる影響が考えられる。

今後の実験の改善点として、付け直すことの影響や、騒音源の違いによる影響を明確にするには、実験が終わるまでヘッドホンを取り外さない実験を、異なる騒音源を用いて複数回繰り返して行う必要がある。