音楽聴取後の認知能力への影響 [東京情報大学] [西村ゼミ卒業論文概要集] [年度ごとの一覧]
2016年度西村ゼミ卒業論文
音楽聴取後の認知能力への影響

先行研究であるナンテらの好みによる認知能力への影響についての実験は、@モーツァルト曲の聴取、A物語の朗読の聴取、2条件の聴取直後に知能検査を行い、@とAのどちらが好みだったかを被験者にアンケートを実施するというような内容であった。その結果、好みの条件での知能検査の方が高得点であった。この結果に著者らは、聴き手の好みが強いと気分を改善し覚醒水準も上昇するので、認知的推論課題の遂行を推進すると解釈している。そこで本研究の目的は、音楽を聴いた後に認知能力にどのような影響があるかを調べることである。

本実験は、モーツァルトの音楽を聴取する条件、好きな音楽を聴く条件、さらに無音条件を加えた3つの音楽条件のいずれかを5分間行った直後、3つの知能検査を実施した。

今回は3つの音楽条件での認知能力の差を知りたかったので、知能検査課題の得点について、音楽条件を要因とした一元配置分散分析を行った。実験結果として、音楽による認知能力への影響は見られなかった。本実験では知能検査課題の順序を固定してしまった為、音楽条件ではない順序効果も現れてしまった可能性があるので、聴取条件だけではなく知能検査課題の実施順序もランダムにし順序効果が現れないようにする必要がある。またローシャ-らによる研究でのモーツァルト効果は15分程度で消失すると記されていたが、本実験では聴取直後から課題終了までの時間は約30分であった為、モーツァルト効果の消失により得点に有意差が見られなかった可能性がある。これには課題ごとに、その実行直前に音楽聴取を行うことでモーツァルト効果の消失を防ぐことができると考えられる。