音楽のテンポが関係して、映像作品の主観的な長さに及ぼす影響があるのだろうか。この疑問から、生駒は背景音楽のテンポが映像作品の主観的長さに及ぼす影響という研究を行った。音楽のテンポで映像が長く感じたり、短く感じたりするのかという疑問を目標とし、今回の研究を行った。
映像は、変化が少ない部分を30秒抽出した。映像の再生開始時刻をランダムに選び再生するプログラムで作成されたものを使用した。映像尺は10秒、12.5秒、15秒、17.5秒、20秒の5種類になるよう設定した。また、音楽は流す映像に違和感がないように選び、音楽のテンポ160を基準として、テンポ110、テンポ210でステレオ再生した音楽を用いた。
そして、被験者7人に対し、1度に2種類の映像を対にして再生し、どちらの映像の方が長く感じたか解答してもらった。必ずどちらか一方には映像尺10秒とテンポ160の組み合わせが再生されるようにした。映像尺5種類とテンポ3種類の15通りと、対の映像の前後を変えることにより計30通りの映像を見てもらい、それぞれの条件で3回実施した。
結果は、映像尺が10秒でテンポ160が基準となっているので、映像尺が10秒〜15秒は、いずれのテンポでも、映像尺が長くなるに応じて長いと感じられている確率が緩やかに右肩上がりになっていることが分かった。また、定めた基準よりも長い15秒から20秒の結果を見てみると、全ての人が一概に長いと判断しないこともあることが分かった。さらに、いずれの尺の長さでも、音楽のテンポによって主観的な映像の長さに大きな違いはないと分かった。
今回は、動きの少ない映像作品だけで実験を行ったが、テンポによって主観的長さが異なったりすることから、映像や音楽といったコンテンツに依存する可能性が考えられる。今後研究を行うにあたって、それぞれ異なるコンテンツをいくつか用意して研究を行うことが望まれる。