過去の研究では、6chを使用することにより4chより印象が大きくかわるのか、また、映像の有無により印象がかわるのか実験した。4chとは、人を起点としたとき、前方の左右に2つ、後方の左右に2つのスピーカーが設置されていることをいう。6chとは、4chに加え、さらに上方の左右2つにスピーカーが設置されていることをいう。この実験に再生された音源と映像は"エアレースRed Bull Air Race Chiba 2015"の現場で録音・撮影したものを使用していた。結果としては、<6ch+映像>と<4ch+映像>では、あまり印象がかわらないということがわかった。また、<6ch>と<4ch>を比較した場合、2つの評価項目で<6ch>のみの方がポジティブな印象になりやすいことがわかった。逆に<6ch>と<4ch>は映像がなく、エアレースの印象が表現しにくいため、<6ch+映像>と<4ch+映像>よりやや楽しめないということがわかった。
今回は、成田国際空港から離陸する飛行機の音を6chで録音した。また、離陸する飛行機の様子を撮影した。この6ch録音は録音場所の確保や機材の多さから、容易に録音を行うことが出来ない。よって、2chで録音した音源を前方に加え、上方・後方チャンネルからも再生することで擬似的な6ch、4ch再生も実施した。これらが、本物の6chや4ch再生に比べて印象に違いがなければ、2ch録音で十分とも考えられる。これらを踏まえて、<6ch>、<4ch>、<2ch>、擬似的な再生である<偽6ch>、<偽4ch>の5条件に、映像を付けた再生条件も追加した。これら10パターンの再生条件で印象及び音の移動感の評価実験を行うことで、上方・後方チャンネルの有無が印象に違いを表すのか、また、6chで録音した音源を6ch、4chで再生したときと、2chで録音した音源を偽6ch、偽4chとして再生したときに印象に違いが表れるのか、さらに、映像の有無が印象に違いを表すのか調べることにした。
5112室で10名の被験者に2回ずつ実験を行ったが、5名の被験者のデータが印象評価と音の移動感両方において低い相関係数であったため、残りの5名のデータで集計・分析をした。
実験の結果より、<6ch>、<4ch>、<2ch>、<偽6ch>、<偽4ch>はそれぞれの映像付の再生条件と比較すると印象の違いが感じられないことがわかった。また、本物の音源である6ch音源、4ch音源と偽物の音源である偽6ch、偽4chの間には印象の違いが出ないことがわかった。2ch再生は4ch再生、6ch再生と比べて印象に違いが生まれているため、上方・後方チャンネルの存在が印象に違いをもたらしていることがわかった。また、<4ch>は6ch再生に対して、音の包み込まれ感が小さく、狭苦しく、物足りない印象が得られたため、上方チャンネルの存在が印象に違いをもたらすことがわかった。