音楽の聴取経験の有無と歌詞の理解が癒しの聴取嗜好に与える影響 [東京情報大学] [西村ゼミ卒業論文概要集] [年度ごとの一覧]
2016年度西村ゼミ卒業論文
音楽の聴取経験の有無と歌詞の理解が癒しの聴取嗜好に与える影響

2010年に行われた杉本の研究は、被験者が中高生のときにヒットしていた楽曲の印象評価をしてもらい、癒しの聴取嗜好を調査するものであった。癒しの聴取嗜好とは、癒されたい時にその楽曲を聴きたい度合いのことである。歌詞や思い出など、過去の経験や懐かしさは癒しに結び付くか?という疑問から、楽曲の印象評価実験を行ったものであった。

今回の研究の目的は、これまで調査されていなかった、「聴取経験がある」楽曲と「聴取経験がない」楽曲で癒しの聴取嗜好に影響を及ぼす印象に違いはあるのか、「歌詞がわかる」楽曲と「歌詞がわからない」楽曲で癒しの聴取嗜好に影響を及ぼす印象に違いはあるのかを調査する。RWC研究用音楽データベースの楽曲を聴取経験のない楽曲として使用し、歌詞が分からない楽曲として、英詞の楽曲を使用した。

被験者は東京情報大学の学生、計57名(内4名は回答に欠損があったためデータとして使用していない)年齢層は19 22歳である。使用楽曲は全12曲で、日本詞の楽曲、英詞の楽曲の割合を1:1とし、内2曲を聴いたことのない楽曲として、RWC研究用音楽データベースのポピュラー音楽から選択した。日本詞の楽曲はオリコンチャートを元に選び、英詞の楽曲については、日本のCM等で使用されていた楽曲の中から選択した。

その結果、杉本の研究と同様、「好き」、「きれいな」と評価される楽曲は癒しの聴取嗜好が高くなることが改めてわかった。「歌詞への共感」、「聴取頻度」、「思い出」に関しても、「好き」、「きれいな」程ではないが、癒しの聴取嗜好が高くなる要因といえる。

「歌詞がわからない」楽曲の方が「歌詞がわかる」楽曲よりも、「きれいな」、「鮮やか」、「ユニーク」と評価される楽曲ほど、癒しの聴取嗜好が高くなるということがわかった。曲ごとに「歌詞がわかる」人の割合と、曲ごとの平均の癒しの聴取嗜好の相関は低く有意でないため、歌詞がわかるかどうかは、癒しの聴取嗜好にあまり関係がないといえる。

「聴いたことがある」と回答された曲と、「聴いたことがない」と回答された曲に分けた分析の結果、大きな違いは見られず、同じ被験者にとって「聴いたことがある」楽曲「聴いたことない」楽曲いずれも、「好き」、「きれいな」、「ユニーク」と評価されるほど癒しの聴取嗜好が高くなることがわかった。