Co-modulation masking release (in Japanese)
共変調マスキング解除
Hall[1]らは、変動する雑音にマスクされる純音の検知が容易になる可能性
を示した。つまり、異なる帯域間で振幅変動が一致しているノイズをマスカと
した場合は、そうでない場合と比べて有意に純音の検知閾が下がるということ
である。その変調周波数は低く、かつ変調されたノイズの帯域が広い方が、こ
の効果は顕著である[2]。変調信号を50Hzの低域通過フィルタを通した雑音波
形とし、1000Hzの純音マスキについて、マスカを変調ありのノイズとしたとき
の検知閾と変調なしのノイズをマスカとしたときの検知閾の差は約10dBにのぼ
ると報告されている[1]。このような現象をCo-modulation Masking Release
(CMR) 共変調マスキング解除と呼ぶ
同一のパワーである2種類のマスカの時間的中央に置かれた信号音がマスクさ
れる。どちらのマスカにおいて信号音が検知されやすいか?
CMR現象において興味深いのは、共変調マスカの帯域を広げるほど、信号音
の検知が容易になる、という点であろう。このことは、信号音の検知閾は、信
号音を含んだ聴覚フィルタ出力における信号対雑音の比によって決定される、
というマスキングにおけるパワースペクトルモデル[3]と矛盾する。パワース
ペクトルモデルによれば、信号音のマスキングに寄与するのは、信号音を含ん
だ帯域のマスカ成分のみであるはずであるが、CMR現象では、それ以外の帯域
のマスカ成分の存在によって、検知が容易になるからである。CMR現象を説明
する考えの代表的なものは以下の2つである
- 異なる聴覚フィルタ出力の振幅包絡の比較を比較し、その食い違いを調べ
ることによって信号音の検知が容易になる。
- 変調によって生じる振幅包絡のくぼみ部分に存在する信号音によって検知が容易になる。
実際には、それらの手がかりを組み合わせて利用しているものと考えられる。
1000Hzを中心として帯域幅の異なる2つのマスカによって1000Hzの信号音
がマスクされる。どちらのマスカにおいて信号音が検知されやすいか?また、
マスカに共変調をかけたものと、そうでないものでは、どのように検知されや
すさが異なるか?
【参考文献】
- Hall, J. W. and Fernades, M. A. , ``The role of monaural frequency
selectivity in binaural analysis'',
J. Acoust. Soc. Am., 76, 435--439, 1984.
- Carlyon, R. P. and Buus, S and Florentine, M. , ``Comodulation
Masking Release for three types of modulator as
a function of modulation rate'', Hearig Research, 42, 37--46, 1989.
- Patterson, R. D. and Moore, B. C. J., ``Auditory filters and
excitation patterns as representations of frequency resolution'',
In Frequency Selectivity in Hearing, Academic Press, 1986.
あとがき
あんまり違いがわかんないっしょ? 結構 CMR のデモはむづかしいのであった。
えっ、信号音が聴こえない? 私には十分聴こえるんですが、、、。
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akira@rsch.tuis.ac.jp