音声プライバシー保護用マスキング音源としての音楽の有効性 [東京情報大学] [情報文化学科] [平成27年度卒業研究概要集] [平成27年度ゼミのリスト] [ゼミ学生一覧]
西村 明 ゼミ 平成27年度卒業論文
音声プライバシー保護用マスキング音源としての音楽の有効性
竹本 俊樹

医療機関や金融機関の窓口などで、第三者に会話が聞こえてしまい、スピーチプライバシーが守られていない場合がある。スピーチプライバシーを守るため、マスキング音源を再生し、第三者のスピーチの聞き取り度合いを低く必要がある。

過去の研究では環境音やヴァイオリン、ピアノのみの曲などのマスキング音源を使い実験を行っていた。しかしマスキングに用いる音源が洋楽やJ-POP、フュージョンなどの音楽でもマスキング効果が得られるかどうかは明らかになっていない。今回の研究では、洋楽やJ-POP、フュージョンなどの音楽、あるいはスピーチマスキング用音源などを用いてマスキング音源として使用し、マスキング効果が得られるか明らかにする。

医療機関や金融機関の窓口、会社の受付やロビーなどといった場所で待機中という状況を想定してもらう。被験者は8名(男性3名・女性5名)に対して行った。使用音源はスピーチ音声が等価騒音レベル52dBを基本に、暗騒音と妨害音をそれぞれ音圧レベルを変えて再生した。暗騒音は実際の郵便局で録音したものである。その音源を54dBと60dBで再生し、それぞれ静かな環境と騒がしい環境を想定する。妨害音はそれぞれ9種類の音源を60dBと63dBで再生した。暗騒音と同時に音楽あるいは雑音が音声を妨害する音として聞こえる場合があり、その音楽あるいは雑音のうるささも、暗騒音のうるささとは別に評価してもらう。これらの音は常に再生されるわけではない。これらの条件と環境で実験を行った。

今回実験を行った音源の中で最もマスキング音源に適していると思われる音源は暗騒音54dBの時のクラシック60dBであった。また、イージーリスニング音源の54dB、暗騒音60dBもクラシック音源と同じく有効だと分かった。これら2つの妨害音での実験は、暗騒音も妨害音もうるさくなく、スピーチ音声の聞き取り度合いの評価も良かったため、有効だと分かった。

妨害音としての洋楽やJ-POP、フュージョンなどは実験条件より少し小さい音圧レベルで再生すると、スピーチマスキング音源として有効なのではないかと考えた。同じように、スピーチ音を多数ミックスして作成されたマスキング音源と、株式会社USENで作成されたマスキング音源+BGMも、実験条件より少し大きい音圧レベルで再生すると、マスキング音源として有効なのではないかと考えた。