〜概要〜
過去の研究では、環境と人との関わりを中心として音を捉えるサウンドスケープ調査としてフィールドワークを行い、五島の自然・文化・環境や五島に住む人々の生活とどのような関わりを持つのかを調査していた。結果としては、住民の音に対する意識・関心はあまり高くないことがわかった。
今回は、サウンドスケープのフィールドワークの代わりに、現場を録音・撮影し、再生する実験を行うことで、その現場のどのような印象が表現されているかを調べることにした。
5月16日に行われた"エアレースRed Bull Air Race Chiba 2015"の現場で録音・撮影し、実験室で再生した。今回は4chと6chを使用した。4chとは、人を中心としたとき、前2つ・後ろ2つにスピーカーが置かれていることをいう。6chとは、人を中心としたとき、前2つ・左右(上に取り付けている)2つ・後ろ2つにスピーカーが置かれていることをいう。なぜ横ではなく上にスピーカーが取り付けられているかというと、"エアレースRed Bull Air Race Chiba 2015"の現場を撮影した際に、上空を飛んでいる飛行機の音を録音し、それを再生しているからだ。そのため、6chは4chより印象が大きくかわるのではないかと考えた。そこで、6chと4chの音のみだけでなく、音と映像、映像のみの"6ch+映像・4ch+映像・6chのみ・4chのみ・映像のみ"の5条件を使用し、被験者に音や映像の印象がどう変わるのかを調べた。
実験で用いた評価用紙の"にぎやかな/迫力のある/都会っぽい/陽気な/好き/広々とした/楽しめる/慌ただしい"はポジティブな印象である。逆に"寂しげな/物足りない/田舎っぽい/悲しい/嫌い/狭苦しい/楽しめない/落ち着く"はネガティブな印象である。
5133室で10名の被験者に6回ずつ実験を行ったが、1名のデータの音や映像による信頼性が半分近く低かったため、実験対象から外し、9名のデータの集計をした。
今回の実験を通してわかったことは、5条件の中で一番ポジティブな印象になりやすいものは"広々とした/狭苦しい"だということがわかった。
6ch+映像と4ch+映像では、あまり印象がかわらないということがわかった。また、6chのみ・4chのみの場合"にぎやかな"や"慌ただしい"の時、6chのみの方がポジティブな印象になりやすいことがわかった。6chのみと4chのみは6ch+映像と4ch+映像と比較して都会っぽい印象になりやすいことがわかった。逆に6chのみと4chのみは映像がなく、"エアレースRed Bull Air Race Chiba 2015"の印象が表現しにくいため、6ch+映像と4ch+映像よりやや楽しめないということがわかった。映像のみの場合、殆どネガティブな印象を受けてはいるが、"広々とした/狭苦しい"だけはポジティブな印象を受けているということがわかった。