平成25年卒業生・平形大樹の「ノイズキャンセリングヘッドホンにおける騒音低減効果の比較と測定方法の確立」を参考にし、ノイズキャンセリング機能を搭載したヘッドホンの騒音低減効果の測定を行った。過去の研究の問題点として、人ごみの音を騒音として使用したSONY製ヘッドホン測定結果で5kHzと10kHzで、10dB近い騒音低減効果が見られたが、これはANCの特性上ありえない数値である。このような測定結果は信頼性が無い可能性が高いため、改めて実験を行い過去の研究との比較を行い過去の研究結果に信頼性があるか検証することを目的とする。
今回の実験では、過去の研究で使用された音源4つの音源(ピンクノイズ、ホワイトノイズ、人ごみの音、地下鉄の音)を再生し、ダミーヘッドを使って録音した。条件としてヘッドホンを装着していない状態、ANC機能ON・OFF(ヘッドホンを装着しているのみの状態)の3通りを録音した。録音したデータは1/3オクターブバンド周波数分析をし、装着していない状態と装着したのみの状態の差、およびANC機能OFFとONの差を求め、騒音低減効果がどの程度あるかを比較した。
過去の研究では、SONY製ヘッドホンのほうがPioneer製ヘッドホンより騒音低減効果が高く発揮している結果が出たが、今回の研究でも、SONY製ヘッドホンは80〜630Hzにおいて最大で12dBほど、Pioneer製ヘッドホンは5dBほどの効果が得られ、過去の研究とほぼ一致した。しかし過去の実験で、人ごみの音を使用したPioneer製ヘッドホンの結果で見られた1kHz以上の騒音低減効果は、今回の実験では得られなかったため過去の実験結果に信頼性がないという結果になった。
今回の実験の問題点として、外来雑音(スピーカーから再生した騒音以外の環境騒音)やヘッドホンの装着具合によって音源ごとの結果に差が出てしまった。今後は自然音や機械音がならない部屋か無響音室で実験を行う必要がある。
過去の研究では、どのようなノイズキャンセリングヘッドホンを使用しても正確な騒音低減効果の測定ができる方法の確立を目的としており、実験には二種類のヘッドホンを使用していたが、Pioneer製ヘッドホンにおいては製品のパンフレットに記述されているほどの効果は、過去の研究や本研究でも見られなかった。過去の研究で得られたPioneer製ヘッドホンの地下鉄の音を使用した結果では8000Hzあたりで-5dBという効果が出たが、本研究でもすべての音源において5000〜8000Hzあたりで-5〜-10dBという結果が出た。これらはヘッドホンの劣化が原因と考えられる。このpioneer製ヘッドホンは今後使用せず、ヘッドホンを変更して改めて実験を行う必要がある。