この作品は、房州うちわの職人である汐見正男さんを紹介するドキュメンタリーである。
「房州うちわ」は、強さと美しさを備えた、千葉県唯一の経済産業大臣指定伝統工芸品である。近年では実用のためという用途は減少し、インテリアファッションとして見直されているが、伝統の技を受け継ぐ人は絶えようとしている。「房州うちわ振興協議会」の会長でもある汐見さんは、毎年多くの子供たちや外国人を対象に、制作体験会を開催して、その魅力と文化を伝えようとしている。
カメラは工房や体験教室の汐見さんに密着して、その言葉と表情を丹念に追う。子供たちの生き生きとした反応に顔をほころばせる汐見さん。そこには職人としてのゆるぎない誇りと優しい人柄が見てとれた。
本作の企画・リサーチからアポイントメント・取材をつうじて、自分たち自身で考え、行動したことで、大きく成長できた。カメラの前で飾ることなく語ってくれた汐見さんのあたたかい人柄に触れ、地域メディア活動のもつ意義というものも深く理解できたように思われる。
本作は、「平成26年度千葉県メディアコンクール」において、「優秀賞・千葉日報社長賞」を受賞した。