概要
目的
アメリカで最大のマイノリティ集団となったヒスパニックは政治の世界にどのような影響を与えているのか。2008年の大統領選挙ではニューメキシコ、ネバダ、フロリダなど民主党が共和党から奪った多くの州でヒスパニックの動向が重要であったとされている。2004年には必ずしも民主党支持を明確に示さなかったヒスパニックが2008年にはオバマの勝利に貢献したのはなぜなのか。
また人口構成の上でのシェアの拡大ばかりでなく社会的内実や質的変容においてヒスパニックはアメリカ社会にどのような変化を及ぼしているのか。
スパニックが現代アメリカに与えているインパクトと更なる潜在的可能性について考察してみたい。
方法
資料での研究
結果
本論ではヒスパニック系移民と現代アメリカ政治について、移民法制、ヒスパニック系移民、ヒスパニック職種構成などを中心に検討してきた。前提とされるのは人口構成の上でシェアを拡大させることによりヒスパニックの政治的影響力が拡大されてゆくという視点である。ヒスパニック系移民は2000年の国勢調査で3530万5818人を記録し、アフリカ系を抜いて最大のマイノリティ集団となった。現在では米国の人口約3億400万人のうち4670万人を占めている。長期の推計では2042年にマイノリティが米国の多数派となり、2050年には米国人の三人に一人がヒスパニックになるとの予測もある。
現在でもカリフォルニア、テキサスなどの重要な州で人口構成の32%を占め、2008年の大統領選挙では民主党から共和党が奪った9州のなかで、ニューメキシコ、フロリダ、ネバダではヒスパニック系の動向が大きく影響したとされている。オバマ政権ではヒルダ・ソリスが労働長官、ケン・サラザールが内務長官に指名され、ソニア・ソトマイヨールが最高裁判事に指名されるなど要職においてもヒスパニックの政治的影響力は拡大している。