音楽の印象と個人の特性がポピュラー音楽による癒し感に与える影響 [東京情報大学] [情報文化学科] [平成26年度卒業研究概要集] [平成26年度ゼミのリスト] [ゼミ学生一覧]
西村 明 ゼミ 平成26年度卒業論文
音楽の印象と個人の特性がポピュラー音楽による癒し感に与える影響
石坂 瞳

音楽にも、きれいな音楽、迫力のある音楽、しっとりした音楽といったように様々な印象がある。その中で、一般の人が癒されたい時に聴きたいと思う音楽はどのような印象を持つ音楽なのかを調査した。実験は、楽曲を聴かせて曲の印象、そしてその曲が癒されたい時に聴きたいか、という質問に答えてもらった。

評価項目の選定は、先行研究が用いた印象と個人の性格、普段聴くジャンルに加えて、ストレス耐性を答えてもらう10個の質問を作成した。過去の研究との大きな違いは、使用する楽曲をポピュラー音楽に限定したことである。これは被験者が若い世代なのでクラシックなどよりもポピュラー音楽の方が聴きやすく、印象にも変化が見られるのではと考えたからである。他にストレス耐性の項目を4個から10個に増やしたことである。これは、ストレス耐性は癒しに対して良くも悪くも影響するのではと考えたためである。そして、その質問の回答から、癒されたい時に聴きたい音楽はどのような印象を持つのかを調べるため、重回帰分析を行った。

楽曲ごとの評価を分析した結果、印象のみでは、ポピュラー音楽のみで限定しても過去の研究同様に、「きれいな」曲ほど「癒されたい時に聴きたい」という結果なった。ストレス判断では、特に通常の食事の回数より、少なかった時にストレスを感じる人ほど、癒されたいときに音楽を聴きたいという結果が得られた。ジャンルを加えた場合は、女性の重相関係数が非常に高くなっており、特にロック、ポップス、ワールドの項目が影響を持っている。女性の方が普段聴く音楽によって癒されたいときに聴きたい音楽に差がみられるという結果が得られた。性格判断の場合は、有意になる項目は多々あったが、その中でも、「明るい」の項目については「自分の性格が暗いと思っている人ほど、癒されたいときに音楽を聴きたい」という結果となった。

10曲分全体の評価を分析した結果、印象のみの場合、過去の研究で挙げられた「きれいな」「鮮やかな」に加えて、「迫力がある」「ユニーク」も癒されたいときに聴きたい印象として判断できた。ストレスの場合は、いくつか有意な項目がある中で、特に環境変化(入学などで、新しく人間関係を築くとき)にストレスを感じる人ほど癒されたいときに音楽を聴きたい人が多いようだ。ジャンルの場合、普段あまり邦楽を聴かない人ほど癒されたいときに音楽を聴きたいと思うようだ。性格の場合は、男女で分析した結果、男性は楽観的な人ほど癒されたいときに音楽を聴きたいが、女性の場合は、悲観的な人ほど癒されたいときに音楽を聴きたいという、男女で正反対の結果が出た。

最後に、評価結果の再現性については、全体的に相関係数が高いので1回目も2回目も結果に大きな差が無く、被験者の評価結果には信頼性があるという結果が得られた。