概要
任天堂と株式会社オトデザイナーズが開発した家庭用ゲームソフト「キキトリック」が任天堂より発売された。このゲームには多数のキャラクターたちが実際の音声を様々に変調した聞き取り辛い音声によってしゃべり、それを聞き取って回答するというゲームである。この「キキトリック」をプレイすることによって雑音中の語音明瞭度が向上するかどうかを調べる。
この研究には先行研究があり、先行研究での考察をもとに、今回の研究では以下の点を改善した。
・語音聴力検査表67-S語表の1表〜8表を使用
・-10dB,-8dB,-6dB,-4dBのノイズレベルで語音聴力検査を実施
・「キキトリック」挑戦回数を制限せずクリアするまで挑戦してもらう
・比較対象として「キキトリック」をプレイしない被験者を用意
・「キキトリック」で使用するキャラクターを1人につき2体に変更
・実験期間の延長
実験では、まず被験者に純音聴力検査を行った。その検査結果の良いほうの耳で語音聴力検査を行った。語音聴力検査表の音声にノイズを加えた音声をつくり、それを使用し語音聴力検査を実施した。その後、被験者には「キキトリック」の"ノイズ君と仲間たち"というモードの中からテレビさんというキャラクターを選択し、3〜4週間の間に12回分プレイをしてもらった。プレイ期間を終えたら再度語音聴力検査を行った。その後、「キキトリック」でノイズ君というキャラクターを選択し、3〜4週間の間に12回分プレイをしてもらった。プレイ期間終了後、再び語音聴力検査を行った。
また、比較対象である「キキトリック」をプレイしないパターンも調査した。調査方法としては、1度目の語音聴力検査実施後、3週間の期間を空け、2度目の語音聴力検査を実施し、更に3週間の期間を空け、最後の語音聴力検査を行った。
分析を行った結果、「キキトリック」をプレイしたグループは語音明瞭度に有意差は無かった。つまり、家庭用ゲームソフト「キキトリック」で遊ぶことによって雑音中の語音明瞭度は向上しないという結果になった。
今後この研究を行うことがあるとすれば、被験者を更に増やすことで統計的に有意に訓練の効果が上がる被験者が現れる可能性がある。また、同じキャラクターを用いたプレイ期間を延ばすことで聞き取る力が身に付き、雑音中の語音明瞭度の向上が望めるかもしれない。