昭和20年8月13日、国鉄総武本線の成東駅に停車中の軍用列車が、米軍戦闘機の空襲を受け炎上した。積荷の弾薬が爆発するのを防ぐため、兵士と駅職員が列車の移動と消火にとりかかったが、ついに間に合わず、駅舎と列車は跡形もなく吹き飛んだ。この大爆発で千葉県鉄道史上最大となる42名の犠牲者が出た。殉職した15名の駅職員のうち8名は10代の若者で、13歳の少年や15歳の少女もいた。終戦のわずか2日前のできごとであった。
本作は、大きな戦禍の歴史の中では埋もれがちなこの惨事を、風化させることなく若い世代に伝えたいと考え、制作したドキュメンタリーである。
昨年の8月13日に催された成東駅構内の石碑への献花式を取材し、参加者らにインタビューをさせていただいた。また、教育委員会や図書館で収集した資料や参考写真、生存者が描いた絵などによって、この事件を再構成した。
あの日、強い使命感のもと、自らの命を賭けて消火活動にあたった人々、とりわけ10代の少年少女たちに想いを馳せ、彼らの犠牲によって戦後日本に築かれた「平和の礎」の上に、今の私たちの日々があるのだという認識をあらたにした。このような悲劇は2度と繰り返してはならない。取材等でお世話になった皆様の懇切なご協力に、深く御礼申し上げたい。