この作品は、一組の男女が、目の前のわずかな道具をつかってコミュニケートすることで愛が育まれるという短編ドラマである。
大学の食堂で勉強する男子学生と女子学生。彼女は彼を意識し、近づくきっかけを考える。彼女は紙コップの底に「ニコちゃんマーク」を描く。彼がこのコップで水を飲み干すと、底にマークが透けて見える。彼は彼女を意識するようになり、次には同じことを彼が仕組む。2人は紙コップに交互に絵を描くことで心を通わせていく。ある日、2人の紙コップの底と底が糸で繋がれる。それを糸電話にして、2人はようやく言葉を交わす。
本作のタイトルでいう「Voice」とは、ここでは音を伴わない声、いうなれば心の声のことである。ケータイやスマホなどのコミュニケーションツールを敢えて用いず、このような声なき声による対話を描くことで、一切の台詞を排したドラマ制作というものにチャレンジしてみたかった。
シナリオの執筆が遅れ、撮影に十分な日程を確保できなかった。もっと丁寧な映像表現をすべきであったと反省している。協力者にはお詫びと感謝の気持ちを伝えたい。作者自身がこのドラマの制作を通じてコミュニケーションの大切さを確かめた体験であった。