先行研究では、音楽聴取による作業効率への影響を様々な音楽を使い、図形を主とした簡単なIQテストによって調べた。その結果、先行実験では音楽を聞くことで作業効率が上がるという結果は得られなかった。
この研究の目的は音楽聴取が集中力及び算数の問題回答時の正答率へ及ぼす影響を調べるものである。そのため、先行研究で使用した簡単なIQテストを簡単な算数の小テストに置き換えて行った。そして先行研究ではモーツァルト効果があると言われているモーツァルトの曲を使っていたが、今回はその代わりにピアノ演奏を用いたクラシックを用いた。また、科学的に確証された事は一度もないが、潜在意識下に刺激を与えることによって集中力を上げると言われているサブリミナル効果のある音楽を用いた。他にも被験者の好きな曲、被験者の普段聞かないであろう曲を採用した。このような音楽を聴取しながら、もしくは音楽無しの条件で、算数の小テストを行なってもらった。
回答数・正答数を集計し、正解不正解を問わず回答数だけを主観的達成度とみなした。また、正答数を客観的達成度とした。これら二つの達成度について、被験者と音楽条件を要因とした二元配置分散分析を行なったが、音楽が回答数や正答数に影響を及ぼすという結果は得られなかった。
曲の印象評価と回答数・正答数との相関、および主観的集中度と回答数・正答数との相関を調べたが、どちらとも相関係数は非常に低く、曲の印象や主観的集中度は、回答数・正答数に影響がないということが分かった。これらの分析と印象評価実験における被験者の感想を合わせると、音楽無しが一番集中できるという傾向が得られた。