エイジズムの社会的構成に関する基礎研究 [東京情報大学] [情報文化学科] [平成24年度卒業研究概要集] [平成24年度ゼミのリスト] [ゼミ学生一覧]
圓岡 偉男 ゼミ 平成24年度卒業論文
エイジズムの社会的構成に関する基礎研究
山崎 直哉

本研究は、超高齢社会を迎えたわが国の高齢者の偏見や差別といった観点から、エイジズムの社会的構成に関する分析を行ったものである。

近年、新聞やテレビなどのマスメディアで、高齢化問題や加齢の問題に関するものが多く取り上げられている。また老後の問題や高齢期の過ごし方については、年金などの経済的な問題やどうすれば健康でいられるのかなど、いろいろな不安も取りざたされていることから、今の中高年者にとってのみではなく、若い人にとっても関心を持っておくべきであると考えられる。高齢化問題について向き合い、精神的にも経済的にも豊かな高齢社会の実現に向けて考えることは、高齢者のためだけではなく、将来高齢者となる現役世代にとっても望ましいことにつながるのではないか。そういう状況に対応して、高齢社会におけるさまざまな情報がもたらされているのだが、そのなかには、高齢者は「弱者である」だとか「病気がち」、「元気がない」といった固定的なマイナスイメージが根強いことなど、高齢者の生活と健康、活動などに関するかなり間違った知識や観念が、広く流布しているのである。このような問題意識に立って高齢化問題に関する考察を行う。問題は特殊な主義主張をもつ人々との間にのみではなく、広く一般に大多数の人々との間に、このような高齢者や高齢社会における先入観が広がっていることにあり、さらに、高齢者の人権や存在に対して、不公平感を与えてしまったり、不利益を被ってしまったりするような事態が発生しているとすれば、こうした高齢者に対する先入観や否定的イメージを是正していかなければならないのである。本稿は、まずそうした固定観念を作ってしまうステレオタイプ、偏見、加えてスティグマの概念について考察していき、さらにそれが問題となってあらわになる差別問題、特に高齢者における年齢差別、いわゆるエイジズムについて合わせて分析したものである。