特撮の起源から現在の特撮までを、作品、技術からまとめた。
特撮とは特殊撮影の略語であり、古くはトリック撮影とも呼ばれていたSFX(Special Effects)を分かりやすく伝えようと、1958年頃から日本のマスコミで使われ始めた言葉である。
特撮作品というと「ゴジラ」や「ウルトラマン」あるいは「スーパーマン」等々、一般に子供向けのイメージが強いが、言うまでもなく、こうした作品以外でも、現実にはありえない空想的なシーンや現実ではあっても撮影の難しいシーンをリアルに映像化する手段として、様々な工夫が重ねられ蓄積されてきた。1980年代以降は、コンピュータグラフィクスなど、映像を後から加工する技術が加わり(これをVisual Effects:VFXと呼んでSFXと区別する)、その後急速な進歩をとげて、今日では実写とCGの区別がつかないほど一体となっている映像も珍しくない。
特撮という言葉には、CGや画像処理でなんでも自在に作り出す現代の映像技術とは異なり、数々の「手作りの工夫」を想起させるノスタルジックな響きがある。他方、CG全盛の今日では、フィギュアの表情や動きを演じるアクターなど新しい職種が誕生している。本稿では、特撮の昔と今をとりあげ、それぞれの「よさ」や味わいを論じた。