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伊藤 敏朗 ゼミ 平成24年度卒業論文
企業プロモーション・ビデオ『山本科学工具研究社-"硬さ"を支える技術-』の制作
星野 峰生

この作品は、社員数23名という中堅企業ながら、「硬さ基準片」の製造において世界的シェアを持つ「山本科学工具研究社」(千葉県船橋市)のプロモーション・ビデオである。

番組は、「あなたはモノの硬さを気にしたことがありますか?」という問いかけから始まる。そして、自動車などの金属製品では、その硬さを安定して管理しながら製造することが大切であること、それを測るのが「硬さ試験機」であり、計測の基準となるのが「硬さ基準片」であることを説明する。ここで、山本卓社長のインタビューを挿み、「硬さ基準片」が日本や世界の製造業に果たしている重要性などを明らかにする。次に、「硬さ基準片」の製造工程を見ていく。純度の高い炭素鋼から部材を切り出して円形に加工し、ナンバリングを行ってから焼入れをする。高温で熱することで金属の組織が変化し、これを急速に冷却することで硬度を高める。その後、時間の経過で硬さが変化しないための処理工程や、炉に入れる温度や時間を調整して基準片を所定の硬さにする工程などを見る。できあがった基準片を、複数の「硬さ試験機」で検査し、その数値を刻印して完成となる。次に「山本科学工具研究社」の歴史を説明する。第二次世界大戦の前、国策によって「日本熱処理技術協会」が「硬さ基準片」の開発に取り組み、昭和14年、山本正一と本多光太郎がその国産化に成功。山本は終戦後も研究を重ね、昭和27年、「山本科学工具研究社」の創業に至る。社長が代替わりしながら、同社の「硬さ基準片」は世界的な定評を得ていくが、今もナノインデンテーションなどの新しい技術や精度の更なる向上を求めて努力を続けている。

この作品では、一般の人々にとっては必ずしも有名でない企業や、普段触れることのない製品の存在や価値というものを、いかに分かりやすく伝えるか考えながら制作した。「硬さ基準片」の製造工程を描くことは、熱処理技術の専門的な知識が必要なことや、工程の一部が企業秘密となっていて撮影できなかったこともあって、困難をともなうものだったが、番組全体としては、「硬さ基準片」の重要性や同社の技術水準の高さを十分に表現できたものと考えている。

私たちは日ごろ、大企業ばかりを注目しがちだが、同社のような優れた中小企業の存在と高度な技術があってこそ、日本の経済活動は支えられている。もとより本作は、そのようなテーマのドキュメンタリー番組をつくる計画であったものが、結果として企業広報ビデオというスタイルになったもので、その点での自らの表現力不足は感じるが、工場のリアルな現場にカメラを持って入ったことで学んだものは大きく、貴重な題材とめぐりあい有意義な社会性を備えた作品ができたと思っている。