ライブハウスなどにおいて、音楽を盛り上げるために演出される照明について研究する。研究にあたり、過去の研究を参考にした。過去の研究では色彩が音楽の印象に及ぼす影響と、音楽と色彩の調和について評価している。その結果、一般に音楽が本来持つ特徴を助長する機能を持つ色彩が、その音楽と調和していると判断されることがわかっている。しかし、過去の研究の問題点として、照明はコンピュータ・グラフィクスによる動画に合成したため、実際の照明とは異なることが挙げられる。よって、本研究では実際の照明を使用する。音楽は過去の実験で使用された楽曲に加え、ライブハウスで演奏されるようなバンド音楽も使用する。
実験は暗くした室内に青、赤、黄、緑の照明を照らし、音楽を再生する。被験者には1曲ごとに音楽の印象を評価してもらう。そして、結果から照明色が音楽の印象にどのような影響を及ぼすのか分析し、動画の中での照明と実際の照明で実験結果に差があるのかどうかを調べる。
実験の結果から、クラシック音楽と相性の良い照明の色について、長調でテンポが遅い音楽は、「青」や「緑」と相性が良く、「赤」や「黄」とは合わない。短調でテンポの遅い音楽は、「青、緑、赤」が音楽と相性が良く、「黄」とは合わないということがわかった。バンド音楽と相性の良い照明の色について、長調でテンポが速い音楽は、「黄、緑、赤」と相性が良く、「青」とは合わない。短調でテンポが速い音楽は、「赤、黄、青」と相性が良く、「緑」とは合わない。長調でテンポが遅い音楽は、「黄、緑、青」と相性が良く、「赤」とは合わない。短調でテンポが遅い音楽は、「青、緑、赤」と相性が良く、「黄」とは合わないということがわかった。過去の実験では短調のクラシック音楽において、「赤」は相性が良くないと判断されていたが、今回の実験では相性の良い色に挙げられた。よって、動画の中での照明と実際の照明で実験結果に差があるということがわかった。また、照明の色によって、同じ音楽でも好みが変わるのかどうかについては、音楽と相性が良い色の照明の場合に「好き」と答えた被験者が多く、音楽と相性が良くない色の照明の場合に「嫌い」と答えた被験者が多かった。よって同じ楽曲でも照明の相性によって曲の好みが変わることがわかった。研究の結果から、今回用いたバンド音楽に限っていうと、調和している照明の色は、長調、短調関係なくテンポの速い音楽には「赤」や「黄」など暖色系の色、テンポの遅い音楽には「青」や「緑」など寒色系の色となることがわかった。また、音楽と照明が調和しているときほど、音楽が好まれることがわかった。