難聴の人に音楽を心地良い音質で聴いてもらうための研究 [東京情報大学] [情報文化学科] [平成24年度卒業研究概要集] [平成24年度ゼミのリスト] [ゼミ学生一覧]
西村 明 ゼミ 平成24年度卒業論文
難聴の人に音楽を心地良い音質で聴いてもらうための研究
高山 大介

世の中で音楽を聴く人は健常者だけだと思われがちだが、耳に障害のある人でも音楽を聴くことが好きな人もいる。その際難聴の人は様々な方法で音楽を聴いている。例えば我々健常者と同じようにイヤホン、カーステレオ、家庭用スピーカー等で聞く場合である。

この研究の目的は、難聴で音楽を聴く人に、どのようにしたら本人が一番聴きやすい音質で音楽を聴いてもらえるかということである。そのために聴力検査、補聴処理を施したら、不快がなく聴き心地が良く改善できた音質で聴こえるのかということを調べる。

今回対象となったのは、私の友人で、生まれつき耳が不自由で、難聴の障害を持った男性22歳である。被験者は日常では常に両耳に補聴器を付けて生活をしている。被験者の特徴としては、右耳より左耳の方が高音も低音も聞こえやすいことが特徴である。また音楽を聴くときは、カーステレオ、イヤホンを使用している。曲のリズム、メロディーはわかるが歌詞までは理解することができないと自己申告している。これらのことを踏まえて実験を進めていく。

選曲はJ-POPと呼ばれるジャンルの中から被験者が好んで聴く楽曲を2曲使用した。サビ前からサビ終わりまでの約30秒間の曲を、補聴処理をしていない元の曲1パターン、補聴処理をした曲3パターンの合計、1曲で4パターンの曲を被験者にランダムな順番で1曲の4パターンを1つ3回ずつ、計12回×2曲=24回を聴かせて、その結果を評価用紙に記入してもらった。

補聴処理とは、聞こえていない音が小さいところは、聞こえるところまで音圧レベル上げる。普通に聞こえている大きい音の音圧レベルは上げない、といった処理のことである。

今回の実験や評価の集計を終えてわかったことは、全体的に見てみても補聴処理を施した音源より、補聴処理を施していない音源の方が、不快なくよりクリアな音質で被験者には聞こえるということがわかった。つまり「高音が聞こえる」、「低音が聞こえる」、「高音と低音のバランスが良い」、「曲のリズムがわかる」、「心地が良い」の項目において、補聴処理を施していない音源の方が優れているということがわかった。その理由として、補聴処理を施していない音源の方が、補聴処理を施してある音源に比べて音量が大きく作成されていた。このため、それらをランダムに同じ目盛りボリュームで再生していると、被験者にはどうしても補聴処理を施していない音源の方が、音量も曲の音質もリズムもバランスも、良く聴こえてしまったと考えられる。そして、被験者が実験を行う前に言っていた、曲を聴いていて歌詞が理解できないという課題をクリアできなかったことが今回の実験の課題であると思った。