今日、エレキギターやエレキベースを使う音楽業界において、情報交換の活発化、インターネットの普及により一般人でもプロクオリティの機材を簡単に知ることができ、入手も簡単になった。
手軽に入手でき、持ち運びも簡単でサウンドに大きな影響を与えるものにエフェクターがあげられる。エフェクターにおいてプロクオリティのサウンドを得るために汎用コンデンサーをオーディオグレードコンデンサーに交換することで音質を向上させる改造(モディファイ)を行うことが多くみられるようになった。
しかしながら、コンデンサーの銘柄を変えることで具体的にどういった変化がおこるかはほとんどの場合数値化されておらず、コンデンサーを高級なものに変えたという満足感からおこるプラシーボ効果(思い込み効果)なのではないかという疑問がぬぐえない。
本論文では エフェクターに使われる高価なコンデンサーと安価なコンデンサーによる音質変化の有無について研究を行った。
クリーントーンのギターでC2、D2、E2、F2、G2、A2、B2、C3を一音あたり約一秒、Audacityで録音する。ピッキングの強さの違いで測定に違いが出ないようにするために、その音源を最初は高価なコンデンサーを用いたエフェクターに通して録音し、そののちに安価なコンデンサーに差し替えて再度同様に録音するという形をとった。
C2(130.81Hz)、F2(174.61Hz)、C3(261.62Hz)の音高を対象に、高価なコンデンサーを用いた場合と安価なコンデンサーを用いた場合の、合計6パターンの倍音の大きさをAudacityのスペクトラム解析で測定した。なお、波形の振幅の立ち上がり部において絶対値の最も大きい点から30000サンプルを選択、測定した。また、ノイズについてはギターを弾き始める前のノイズ30000サンプルについてスペクトルを測定した。
測定の結果から、高価なコンデンサーの方が安価なコンデンサーより1500Hz〜3000Hzの一部のレベルの低い倍音において2dB〜10dB程度強かった。また、高価なコンデンサーの方が0.5dB程度ノイズが少ないと言える結果となった。だがしかし、倍音とノイズ、共に聴感上は違いがあるとは言い切れない程度の結果となった。