概要
いい耳を持つ音楽家というのは、音の感性が良い。彼らは音楽の教育を受けることにより、そして、長年の音楽練習中、知らない内に、自然に感性が高い耳が出来上がる。一般的に、音の感性を良くする方法は二つある。一つは、長期的な実務経験の蓄積、二つ目は、体系化されたシステムによる訓練を受けることである。
このような体系化された聴覚訓練システムを使用して、mp3変換による音質劣化の識別訓練による訓練効果を明らかにする研究が行われている。参考とした実験と同じ結果が得られるかどうか、そのため、4人に被験者を追加し、従来の研究を同じ手法により、本研究を行った。数回聞いて自分が圧縮の違いを聞き分けることができる、いわゆる簡単過ぎず難し過ぎない曲をRWC音楽ジャンルデータベースから3曲(tr4、tr17、tr33)選択した。曲は7.5秒持続し、0.5秒でフェードアウトするよう編集した。曲を64Kbps、96Kbps、128Kbpsのビットレートで圧縮し、原音を含む4通りに対して、4人の識別能力を測定した。そして、訓練は三週間かけて、毎週同じ曲(tr4)で行った。最後、訓練終了後再度、訓練で使われてない曲(tr17,tr33)で識別実験を行ってもらった。
その結果、訓練した曲の訓練後、識別成果は上がった。また、訓練されてない曲で、訓練後の識別能力の向上には個人差があり、訓練により識別能力の向上した者と、あまり影響がなかった者も居た。そして、訓練されてない2曲の場合、同一人物でも曲によって、この識別能力は向上したりしなかったりすることがあった。過去の研究と同じ様に、このような訓練を経た後での識別能力が、ある程度の時間(50~90日後)を経ても持続するのか、ということを調べた。その結果、これもまた個人差があり、持続していると見られる者や、訓練前にまで逆戻りしている者もいた。このような結果は、過去に5人の被験者に対して行った研究と結果であった。