仮想現実と人間関係をめぐる諸問題 [東京情報大学] [情報文化学科] [平成23年度卒業研究概要集] [平成23年度ゼミのリスト] [ゼミ学生一覧]
圓岡 偉男 ゼミ 平成23年度卒業論文
仮想現実と人間関係をめぐる諸問題
西山 英理佳

近年、漫画やアニメなどの二次元オタクと呼ばれるオタクの中には、同じキャラクターに対する好意を共有したいと思う人と、自分だけが独占したいという人が存在する。その中でも特に異性を象徴するキャラクターに強い関心を寄せるオタクが抱く、誰にも取られたくない、他者と共有したくないという恋愛にも似た感情について分析してきた。本稿ではまず恋愛とオタクのそれぞれの特徴や定義を述べた上で、二次元という仮想現実の中のキャラクターに対して、はたして本当に恋愛と呼べる状態が存在するのかという点に注目したが、恋愛という人間関係は実在する対人として成り立つ関係であり、仮想現実に存在するキャラクターに対する感情は、自分の理想を重ねた偽物の思いであり、擬似恋愛となってしまうことが分かった。人間関係の中でも特殊である恋愛は、自分の思うように関係が進むわけではない。相手の意思と自分の意思があってこそ恋愛という人間関係が成り立つのである。しかし、仮想現実であるキャラクターであれば、自分の理想どおりの関係でいられる。キャラクターはあくまで人間が作り出した虚像であり、仮想現実であるキャラクターとの間に存在する関係というのは自分の一方的な理想でしかなく、現実の人間関係からの逃げ道なのである。様々な媒体が存在する中で、人は楽に人間関係を築こうと簡単な手段を選んでいくが、その結果としてコミュニケーションの不足によって人間関係が上手くいかない人が増えている。そして近年、身近に感じられるようになった二次元という仮想現実は一番近い逃げ道であるといえる。人間関係の壁や不安から逃げるように仮想現実へ理想を向け、そして他人から離れた世界へと依存していくといえる。