近年急速な経済のグローバル化につれ、文化面でも同じような広がりを見せている。これらの発展を支えているのは言語教育他ならない。本研究では、日本と複雑な歴史的関わりを持ち、さらに今や日本の最大貿易相手国になっている中国に目を向け、中国における日本語教育の全体像を明らかにする事とともに、これからの日本語教育のあるべき姿を示していく事を目的としている。
先行研究を調べたところ、日本人研究者と中国人研究者が研究内容において、傾向的違いが見られた。日本人研究者は文法・発音や日本事情などの一歩入り込んだ現場での教授法の研究が多いのに対して、中国人の研究者は日本語教育の歴史や日本語教育そのものの在り方に関する研究多いという傾向がある。
各教育段階における中国の日本語学習者数を地域別でみると、歴史的要素が深く関わっている事が分かる。東北地方(旧満州)や台湾地方はかつて日本の支配下にあったため、日本語教育は盛んでいる。とくに、東北地方は初等教育(日本の小学校相当)から日本語教育が組み込まれている。現在は、日中間の活発な経済活動・文化交流及び中国全体の生活水準の上昇を背景に、全国の日本語学習者数が飛躍的に増加している。
しかし、テレビやインターネットなどの普及は文化交流の促進に後押しするだけでなく、日本語学習者のニーズを多様化している。仕事のための専門分野の日本語やアニメやマンガなどポップカルチャー的な日本語など様々である。
学習者の学習目的多様化の中で、これからの日本語教育は自ら発信のできる文化・情報交流をもととし、日本語教育者は目的論的論法の考え方を駆使し、学習者のニーズに合った日本語教育を行っていくべきであろう。社会の需要に適応する高いレベルにある国際型、複合型、応用型と多様化する日本語人材の需要に応じて、しっかりした日本語能力と充実した文化知識を持つ人材の養成が今後の養成目標であると本論文の結論としてまとめた。