一昔前までは、梱包を解き中を開けてみれば、発泡スチロールで作られた緩衝材が、あの独特の擦れる音も高らかに、何よりもまず目に付いたものである。しかし、今ではその姿を見ることも少なくなった。いや、発泡スチロール自体は、今も梱包材として、第一線で活躍をし続けており、目にする機会もまだ多いだろう。減ってしまったのは「緩衝材」として頑張ってきた発砲スチロール達だ。環境への配慮や、リサイクル法の制定等が理由らしいが、何にせよあの微妙な取り回しの悪さに、悩まされることは少なくなった。あの煩わしさでさえ、過去の事となれば妙に懐かしく思えるが、その発泡スチロールとは打って変り、緩衝材としての利用が増えたものがある。ダンボールだ。
もちろん梱包材、緩衝材を問わず、発泡スチロールやダンボール以外にも、一般に広く利用されている素材もある。しかしダンボールほど、急激に利用が増えたものもない。かつて発砲スチロールが押し込められていたスペースには、一見複雑なものから、実に単純な構造のものまで、多種多様な商品にあわせて組み立てられたダンボール達が収まっている。
当然の疑問だが、何故ダンボール製緩衝材が増えたのか。何故ダンボール製で無ければならなかったのか。
本論文では、ダンボールで作られた「梱包材」「緩衝材」のデザイン・設計の進歩、またダンボールそのものの進化、リサイクルブームを背景とした、環境への配慮等、その利点・欠点を、あくまでダンボール製の「緩衝材」に焦点をあてて取り扱ってみたい。