ICT(情報通信技術)や情報処理技術の発達は社会と密接な関わりを持っており、特に近年のICT技術は社会・経済に対して直接的な影響を及ぼすことが多い。その中でもここ2,3年で著しい発展と普及を遂げた技術が「AR 技術」、Augmented Reality=拡張現実である。拡張現実とは、我々が目にする光景(現実)に対してデジタルな情報を可視的に付加することを言う。
ARの種類は大きく分けて二つあり、GPSなどを使ってAR機器(ユーザー)の現在地を割り出し、予め指定された座標、地点にアノテーションを拡張する位置情報型AR。マーカーや物体(映像)をカメラで認識させ、これに応じたアノテーションの拡張を行う画像認識型ARの二つである。ARを実際にどのように使うのかという目的や方向性についても分類できる。
基礎的な概念や研究は数十年前から存在していたのだが、実用的な段階に達したのは 21 世紀に入ってからであり、さらに商業的かつ大規模な普及を見せ始めたのはここ2、3年足らずである。事実、全ての人がAR技術に実際に触れた訳ではなく、伸びしろはまだ大いにあるとするのが一般的な見解である。
しかしその発展速度は異常なまでの速さを見せ、すでに多様なARコンテンツが登場している。AR技術の問題点であった出力デバイスによる認識精度への改善が少しずつ進み、いずれは既存のAR技術の組み合わせ、ICTや情報処理技術の発達によって、娯楽分野と広告分野、日常生活におけるARの多彩さはより広がっていくと考えられる。
英国の研究機関『Juniper Research』によれば、2014年までに7億ドルの市場が生まれると言われており、ごく近い将来には、より完成されたプラットフォーム型AR、いうなればARブラウザとして結実することが期待される。
本研究では AR技術がどのようなものかといった概説を皮切りに、具体的な特徴、なぜ近年になって普及したのかなどに言及し、さらに現在のAR技術の問題点について論じた。そのうえで、AR技術が今後どのような用途に供されるのか、そこから更にどのような形へ発展していくのか、といった考察を行なった。